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  • 2024.09.28

重度歯周炎(根分岐部病変)の歯を救う歯周組織再生療法

重度歯周炎(根分岐部病変)の歯を救う歯周組織再生療法

皆様、こんにちは。まこと歯科・矯正歯科の院長 木村誠です。

今回のブログのテーマは、「重度歯周炎(根分岐部病変)の歯を救う歯周再生療法」について取り上げます。

局所的に重度に進行した歯周病に対して、歯周組織再生療法という外科的(手術)な方法を用いて治療した症例を提示いたします。

初診時のレントゲン写真です。今回治療した歯は、銀歯が装着されている左下の奥から2番目の歯で、レントゲンの中央にある歯です。

レントゲンで白くなっている部分が銀歯になります。失活歯(神経を失った歯)であることがわかりました。

この歯のみ歯周ポケット(歯周病が進行すると数値が大きくなる)が一部に9mm(正常値3mm以下)あり重度に進行している状態でした。幸いその他の歯はほぼ正常な状態でした。

さらに診査を進めるために、CT撮影を行いました。矢印の部分にX線透過像(レントゲンで黒くなっている)を呈しており、歯根周囲の骨吸収が疑われます。

以上の診査から

①根分岐部病変(歯周病)

②歯根破折

③穿孔

④根尖性歯周炎

などが疑われます。最悪抜歯も考えられる状態でした。

このような場合、まず銀歯を外し、根管治療を行います。それと同時に確認できる範囲で破折や穿孔がないかを確認します。

銀歯を外すと、中には、メタルコア(金属製の土台)が装着されておりました。

金属の土台を丁寧に取り除くと、歯の中はかなり汚染されている状態でした。

ラバーダム防湿(唾液の侵入を防ぐために行うゴムのマスク)を装着できるように隔壁を作り、根管治療をできる環境づくりを行いました。

中の汚染物質をきれいにしました。歯が高度に変色しておりましたが、破折や穿孔は認めませんでした。

根管治療を行い、数ヶ月間経過し、再度CTを撮影しました。

やはり治療前と大きな変化はない状態でしたので、外科的な治療をすることとなりました。

ところで、上記の①の根分岐部病変について説明いたします。

主に臼歯、特に大臼歯は歯根が複数あることが多く、その歯根が分岐している股の部分のことを根分岐部と呼びます。

そこの部分に歯周病が進行すると、非常に治りが悪く、予後が悪いと言われております。

改めて初診時のレントゲンを見ると根分岐部の部分に透過像(黒く映る)を呈しております。

上記の論文から根分岐部病変を治療せずに放置すると歯周病が進行し、抜歯になるリスクが高くなることが示唆されております。

しかしこの根分岐部病変は歯周組織再生療法により回復する可能性があります。

ただし、歯周組織再生療法に限らず、歯周病の手術を行う場合、プラークコントロール(歯磨き)が良好であることは必須となります。

この患者様は非常に熱心にブラッシングしていただける方でしたので外科的な治療も可能であると判断しました。

患者様も治療を希望されましたので、歯周組織再生療法を行うこととしました。

外科処置当日の口腔内写真。

歯周ポケット(歯周病の重症度を示す)は9mm弱(正常では3mm以下)あることがわかりました。

歯肉を切開剥離し、デブライドメント(歯石取り及び炎症性の歯肉除去)を徹底的に行い、骨欠損の度合いを調べると重度の骨吸収であることがわかりました。

リグロスという日本で発明された歯周組織を再生させる薬剤と歯根周囲に塗布し、骨補填剤を填入しました。

その後、上皮の侵入を防ぐために吸収性の遮蔽膜を留置しました。

細い糸を用いて、縫合を行いました。

縫合後は、歯が動くのを最小限にするためにワイヤーと接着剤を用いて固定しました。ここから6ヶ月後再評価することとしました。

6ヶ月後、歯周ポケットは正常の値に変化したため、補綴物作製の工程に移行しました。上記の写真は、印象(型取り)時となります。適合の良い補綴物を作製する上で、必須となる歯肉圧排という歯と歯茎の間に糸を挿入することによって一時的に歯茎が開き、型取りの材料が細部まで入っていくことで精密な型が取れるようになります。

ジルコニアセラミックにて修復致しました。補綴物周囲の歯肉には炎症はなく正常な状態です。

ジルコニアなどのセラミックは、プラーク(磨き残し)が付着しにくく、また適合が良いため歯周病の患者様には、最適です。

治療後のレントゲン写真。根分岐部は治療前と比較し、不透過性が亢進していることが分かりました。

CT像でも術前透過像を呈していた部分は、不透過性が亢進しておりました。

別角度でも丸で囲った部分を見ると治療前に比べ、治療後では明らかに不透過性が亢進し、骨(正確には骨様組織)が再生しているように見えます。歯周ポケットも正常な数値になり、患者様からも喜んで頂けました。

このように重度に歯周病が進行していても、歯周組織再生療法により保存が可能になることがあります。

ただし、歯周組織再生療法は、歯周病の手術の中でも最も高度なものの一つであり、歯科医師の知識や技術が問われます。また患者様の協力ななければ、絶対に上手くいかない治療です。

最後に歯周組織再生療法の適応症について詳しく説明します。

歯周組織再生療法(ししゅうそしきさいせいりょうほう)は、歯周病などによって破壊された歯周組織(歯を支える骨や歯肉など)を再生させるための治療法です。この治療法の適応症は、歯周病の進行度や組織の損傷具合、患者の全身状態などによって判断されます。以下に、歯周組織再生療法の主な適応症を詳しく説明します。

1. 垂直性骨欠損

歯周病が進行すると、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けてしまうことがあります。特に、垂直方向に骨が失われる「垂直性骨欠損」では、再生療法が効果的です。歯周組織再生療法により、失われた骨の部分を再生させ、歯の支持力を回復することが期待されます。

2. 歯周ポケットが深い場合

歯周病によって歯と歯肉の間に深い歯周ポケットが形成された場合、そのポケットを放置するとさらに歯周組織が破壊されていきます。再生療法では、このポケット内部の組織を再構築し、ポケットの深さを減少させることが目的です。

3. 限局性の骨吸収

歯周病により骨が局所的に吸収された場合、その部位に対して再生療法が行われます。特に、単一の歯に限局した骨吸収に対しては、骨移植や再生膜を用いることで骨を再生させる治療が有効です。

4. 根分岐部病変

大臼歯の歯根部分が分岐しているところ(根分岐部)に骨吸収が見られる場合、これを「根分岐部病変」と呼びます。再生療法は、この部分の骨を再生するためにも使用され、特に深度の浅い病変(Grade IIまでの根分岐部病変)では効果が期待できます。

歯周組織再生療法が適応となる患者様

1.健康状態が安定している患者様

全身的な健康状態が良好であり、歯周病が進行していないか、進行が制御された患者が再生療法の適応となります。例えば、糖尿病や心疾患などの全身疾患がコントロールされている場合に限り、再生療法が行われることがあります。

2.患者様の意欲や協力

再生療法は長期的なメンテナンスが必要で、術後の歯周管理が非常に重要です。そのため、患者が歯周病予防のためのケア(定期的な歯科受診やセルフケア)に積極的に取り組める場合、再生療法が推奨されます。

補足

歯周組織再生療法には、さまざまな治療方法が存在します。代表的なものとして、エナメルマトリックスデリバティブ(EMD)やリグロス、再生膜(GTR:ガイド付き組織再生療法)、骨移植が挙げられます。それぞれの方法は、症例に応じて選択され、歯周組織の回復を図ります。

適応外の症例

  • 歯周病が進行しすぎており、再生が困難な場合。
  • 患者が全身疾患により手術を受けられない場合(例:コントロールが不良な糖尿病、免疫不全など)。
  • 再生療法後のメンテナンスに協力的でない患者。

歯周組織再生療法は、適切な症例では非常に有効ですが、すべての歯周病患者に適応されるわけではなく、個々の症例に合わせた判断が必要です。

当院では、歯周病に対して予防から治療まで行っておりますので、歯周病が気になる方は、当院までお気軽にご相談下さい。