- 2024.12.27
治療期間の短縮や手術回数の減少が可能となる、抜歯即時インプラント治療。(前歯編)
皆様、こんにちは。まこと歯科・矯正歯科の院長を務めております木村誠です。
今回のブログのテーマは、『抜歯と同時に行うことで治療期間の短縮や手術回数の減少が可能となる、抜歯即時インプラント治療。』です。
抜歯即時インプラント治療:治療期間短縮と手術回数を減らす選択肢
失った歯を補うインプラント治療は、見た目や噛み心地を自然に再現できる優れた治療法です。その中でも、抜歯と同時にインプラントを埋入する「抜歯即時インプラント治療」は、治療期間の短縮や手術回数の減少が期待できる方法として注目されています。特に前歯の治療では、審美性や機能性を考慮した迅速な対応が求められ、この治療法が適しています。
本記事では、抜歯即時インプラント治療がどのように行われるのか、特に前歯の治療におけるポイントやメリットについて、最新のエビデンスを基にわかりやすく解説します。
1. 抜歯即時インプラント治療とは?
抜歯即時インプラント治療とは、歯を抜いたその日にインプラントを埋め込む治療法です。従来のインプラント治療では、抜歯後に骨や歯茎が治癒するまで3~6か月待つのが一般的でした。しかし、抜歯即時インプラント治療では、抜歯後すぐにインプラントを埋入することで、以下のようなメリットがあります。
主なメリット
- 治療期間の短縮
抜歯後の治癒期間を待たないため、全体の治療期間が短くなります。 - 手術回数の減少
抜歯とインプラント埋入を同時に行うため、患者様の負担が軽減されます。 - 骨の吸収を抑制
抜歯後の骨吸収を抑え、インプラントの安定性を高める効果が期待できます(出典:Schropp et al., 2003)。 - 審美性の維持
特に前歯の場合、抜歯と同時に仮歯を装着することで、見た目を早期に回復させることが可能です。
2. 前歯における抜歯即時インプラント治療の重要性
① 審美性の回復が早い
前歯は「見た目」に直結する部位です。抜歯即時インプラント治療では、抜歯と同時に仮歯を装着することができ、治療中も自然な見た目を保つことができます。これは患者様の心理的負担を軽減する重要なポイントです。
② 骨吸収を抑える
抜歯後、骨は自然に吸収され始めます。この骨吸収を防ぐためには、迅速にインプラントを埋入することが効果的です(出典:Araujo et al., 2005)。前歯のように骨が薄い部分では、特にこの対策が重要です。
③ 歯茎の形状を保持する
前歯では、歯茎の自然な形を保つことも審美性の観点から重要です。抜歯即時インプラント治療では、インプラントや仮歯を利用して歯茎を支えることができるため、自然な歯茎の形状を維持しやすくなります。
3. 抜歯即時インプラント治療の流れ
前歯の抜歯即時インプラント治療は、以下のようなステップで進行します。
① 事前診断
CTスキャンやX線撮影を使用して、骨や歯茎の状態を詳細に診断します。骨量が不足している場合や感染がある場合は、別の方法を検討することもあります。
② 抜歯
問題のある歯を丁寧に抜歯します。この際、骨や歯茎をできるだけ損傷しないよう配慮します。
③ インプラント埋入
インプラントの成功にとって、初期固定は非常に重要であるため、インプラントの安定性を調べます。
当院では、オステルという初期固定を必ず測定するようにしています。
抜歯した部位にインプラントを埋入します。適切な位置と角度で埋入することで、審美性と機能性を確保します。
④ 仮歯の装着
手術当日に仮歯を装着することで、見た目を早期に回復させます。
⑤ 定着期間と最終補綴
インプラントが骨に定着するまで数か月待ち、最終的な人工歯(セラミックなど)を装着します。
4. 抜歯即時インプラント治療の適応条件
この治療法は非常に効果的ですが、全ての患者様に適しているわけではありません。以下の条件が満たされている場合に適応となります。
適応条件
- 骨の量と質が十分である。しかし以下に示すルートメンブレンテクニックを用いることができる場合は、条件が緩和される可能性があります。
ルートメンブレンテクニックについて
林揚春先生が提唱する「ルートメンブレンテクニック(Root Membrane Technique)」は、歯科インプラント治療における革新的な手法です。このテクニックは、主に前歯部などの審美性が求められる部位で、自然な歯ぐきの形態や骨量を最大限に維持することを目的としています。
以下に、一般の患者さんにもわかりやすく、このテクニックを説明します。
1. 何をする技術なのか?
通常、歯を抜く際には歯根(歯の土台部分)も取り除かれます。しかし、ルートメンブレンテクニックでは、歯の根の一部(主に前面)を意図的に残します。この部分を「メンブレン(膜)」として扱い、歯の周囲の骨や歯ぐきを支える役割を果たします。
2. どうして歯の根を残すの?
歯を抜いた後、歯ぐきや骨がやせてしまうことがよくあります。特に前歯などの見た目が重要な場所では、歯ぐきがやせるとインプラントを入れた後も「人工的な見た目」になってしまう可能性があります。
歯の根を部分的に残すことで:
- 歯ぐきの自然な形状を維持。
- 骨量の減少を防止。
- インプラントの土台がより安定する。
これらが可能になります。
3. 具体的な流れ
以下は治療の基本的なステップです:
- 抜歯と根の選別
壊れた歯のうち、根の前面部分を丁寧に残します。虫歯や感染がない部分だけを選んで保存します
歯の中央で半分に分割します。
頬側の歯根を一部残します。
インプラントの埋入
残した歯根の背後にインプラントを埋入します。残った歯根がクッションの役割を果たし、骨と歯ぐきを支えます。
4. メリット
- 自然な見た目:歯ぐきの形が保たれるため、インプラントが自分の歯のように見えます。
- 長期的な安定性:骨の減少が抑えられるため、インプラントが長持ちします。
- 痛みの軽減:骨移植などの追加処置が不要になる場合があります。
5. 注意点
- 専門的な技術が必要:すべての歯科医師がこのテクニックを習得しているわけではありません。経験豊富な歯科医師に相談することが大切です。
- 条件が限られる:歯の根が健康であることが必要で、すべてのケースに適用できるわけではありません。
6. 誰に向いているのか?
- 前歯など審美性が重視される部位にインプラントを希望する方。
- 骨や歯ぐきのやせを最小限にしたい方。
- 歯を失った後も自然な笑顔を保ちたい方。
ルートメンブレンテクニックは、患者さんの満足度を高めるための最新技術です。もしこの方法に興味がある場合は、インプラント治療の経験が豊富な歯科医師に相談してみてください!
- 正確な診断と治療計画が可能であること
不適応条件
- 歯根が複雑に破折しているもしくは重度の虫歯で保存が難しい場合
- 重度の歯周病などにより骨量に著しく不足を認める場合
5. 抜歯即時インプラント治療のエビデンス
多くの研究が抜歯即時インプラント治療の有効性を支持しています。
- 成功率の高さ
抜歯即時インプラント治療の成功率は、従来の方法とほぼ同等で、90%以上とされています(出典:Chen et al., 2004)。 - 骨吸収の抑制
抜歯後にインプラントを埋入することで、骨吸収が大幅に抑制されることが報告されています(出典:Araujo et al., 2005)。
6. まとめ:前歯の抜歯即時インプラント治療は早期回復の鍵
抜歯即時インプラント治療は、治療期間の短縮や審美性の早期回復が期待できる優れた治療法です。特に前歯では、見た目と機能性を重視した対応が必要なため、この治療法が適している場合が多いです。
治療を検討されている方は、抜歯前に当院にご相談いただけますと幸いです。ご自身に最適な治療計画を立案致します。
参考文献
- Schropp, L., et al. (2003). Bone healing and soft tissue contour changes following single-tooth extraction: a clinical and radiographic 12-month prospective study. The International Journal of Periodontics & Restorative Dentistry.
- Araujo, M. G., & Lindhe, J. (2005). Dimensional ridge alterations following tooth extraction. An experimental study in the dog.
- Chen, S. T., & Buser, D. (2004). Esthetic outcomes following immediate and early implant placement in the anterior maxilla—A systematic review. The International Journal of Oral & Maxillofacial Implants.