- 2024.06.10
歯周病の進行を食い止める歯周組織再生療法
皆様、こんにちは。まこと歯科・矯正歯科の院長の木村誠です。
今日は、「歯周組織再生療法」について説明致します。
まず歯周再生療法とは、歯周病によって失われた骨や歯周組織を再生する治療法です。
歯周病は感染性炎症性疾患であり、歯周組織を破壊するため、その進行を遅らせることや再生することが重要です。
この治療法では、まず骨内欠損に対して、再生のためのスペースを作ります。次に、そこに生体適合性のある薬剤(エムドゲイン)や成長因子(リグロス)を導入します。これらの薬剤や因子は、失われた組織の再生を促進し、骨や歯周組織の成長を誘導します。この過程で、歯周病によって損なわれた骨や歯周組織を再生させることが期待されます。
歯周再生療法は、歯周病の進行を遅らせるだけでなく、口腔機能の維持や全身の健康にも良い影響を与えることが期待される重要な治療法です。歯周病が慢性的な進行を示すため、早期の診断と治療が必要です。
当院で歯周再生療法を行なった1症例を以下に示します。
初診時20代の女性で、歯周病の治療をしてほしいとのことで来院されました。
20代と聞くと、歯周病発症には早いのではないかと思う方もいらっしゃるかと思いますが、実は、重度歯周炎は、20代後半から30代後半にかけて発症すると言われております。
手術前の口腔内の状況です。この写真を見る限り、問題がないように見えますが、歯周病は骨の病気ですので、
レントゲンで診査さる必要があります。
上記のレントゲン写真の黄色の矢印の部分が炎症により骨吸収しておりました。歯周病をしっかり治したいという希望がありましたので、歯周再生療法をすることとなりました。
切開・剥離子、歯石を含めて徹底的に歯茎の中を掃除すると歯槽骨の吸収が認められました。
リグロスという再生を促す薬剤を塗布し、骨補填剤を填入しました。
しっかりと縫合し、ワイヤーで固定をしました。
半年後のレントゲン写真では、骨吸収していた部分はレントゲン不透過性が亢進し、骨様の組織の再生を認めました。
歯周病は、沈黙の病気と言われており、症状がないままに進行していることがあります。自覚症状(歯がグラグラ、歯茎の腫れ)が出た時には、抜歯以外方法がない場合もあるため20代以降の方は、こまめに定期検診に受診されることを強くお勧めいたします。
ここで今回ご紹介致しました歯周再生療法の適応症・非適応症について説明いたします。
骨の再生に関しての適応症は、主に2つです。①垂直性骨欠損と②根分岐部病変です。
❶垂直性骨欠損
上記レントゲンの黄色のまるで囲った部分は歯の周囲の骨が炎症により吸収しています。歯石沈着も認めます。このようにくさび状に骨が吸収するタイプの歯周病は一般的に進行が早いと言われており、炎症に加えて、噛み合わせや咬合力が影響していると言われています。
この論文からも垂直性に骨が吸収している場合、10年後その歯が失われる確率は、45.6ー68.2%です。もし抜歯にまで至っていないとしても歯周病が進行していることには間違いありません。骨の吸収量が少ないうちに歯周再生療法により歯周病の進行を食い止める必要があります。
❷根分岐部病変
上記の左側のレントゲン写真の黄色のまるで囲った部分には、骨吸収によりレントゲン透過性が亢進(黒く見える)しています。大臼歯(奥歯)は歯根が複数あり、その歯根同士の分岐している部分に歯周病が進行すると治療が難しく治りないくいと言われています。右側のレントゲンは約5年後のレントゲンですが、歯周病はさらに進行し、周囲の骨はほとんど無く、グラグラの状態となってしましました。また骨吸収が起こったことで、周囲の歯茎も下がり、歯根部分が口腔内に露出したことで大きな虫歯ができてしましました。
こちらの論文から根分岐部に歯周病の進行を認めた場合、その程度が大きいほど、歯を失う可能性が高いことが示唆されています。しかし一方
こちらの論文から一段階でも歯周病の進行の程度を下げることができれば、歯を保存できる可能性が高くなることも言われております。
歯周再生療法の非適応症
- 重度の水平性骨欠損:水平方向に広範囲で骨が失われている場合、再生療法の効果は限定的です。
- 不良な口腔衛生状態:患者が適切な口腔衛生を維持できない場合、再生療法の成功率は低下します。
- 喫煙者:喫煙は再生療法の成功に悪影響を与えるため、喫煙者は適応外となります。
- 全身疾患:糖尿病、免疫不全、骨粗鬆症など、全身的な健康状態が不良な場合、再生療法は推奨されません。
- 治療後の管理が困難な場合:再生療法後のメンテナンスが難しい場合、治療効果が持続しない可能性があります。
まとめ
歯周組織再生療法は、適切なケースでは非常に効果的な治療法ですが、すべての患者に適応できるわけではありません。治療の適応症や非適応症については、歯科医師とよく相談し、患者の個々の状態に基づいて判断することが重要です。
歯周病について気になる方は、当院までお気軽にお問い合わせ下さい。