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  • 2024.04.14

根管治療の再治療が多くなる理由

根管治療の再治療が多くなる理由

皆様、こんにちは。まこと歯科・矯正歯科の院長をしております木村誠です。

今日は、神経を失った歯の治療の再治療が多い理由を説明したいと思います。

治らない原因は、治療中、治療後の細菌の侵入です。

今日は、治療中と治療後の細菌の侵入を極力減らす方法をお伝えしたいと思います。

ところで根尖性歯周炎は、歯の根尖部に菌が感染し、炎症が起こる状態です。抜髄時に根管が無菌であれば、その後の根尖性歯周炎のリスクは低くなります。これは、根管内に残存する細菌が原因となる感染がないためです。

抜髄(根管治療)は、歯の内部に存在する神経や血管組織を除去し、根管を清掃し、詰め物で密閉する治療法です。このプロセスで根管内の細菌や感染源が除去されるため、根管が無菌状態になります。その後、適切な詰め物や封鎖材料が使用され、根管がしっかりと密閉されることで、再感染を防ぐことができます。

一つのポイントは、根管治療中に細菌の侵入を防げば、根尖性歯周炎の発症リスクは大幅に低減されます。

上記の写真はラバーダム防湿をした状態で根管治療を示しています。

治療中の細菌の侵入を極力少なくするのが、ラバーダム防湿です。歯を口腔内から隔離することで根管に細菌が侵入するのを防ぎます。

ラバーダムは、歯科治療において使用される重要な器具の一つであり、その防湿の重要性は以下のような点にあります:

  1. 治療の精度向上: ラバーダムを使用することで、治療中に唾液や血液などの口腔内の液体が歯にかからず、治療部位が乾燥した状態を保つことができます。これにより、治療中に使用する材料や接着剤が適切に硬化し、治療の精度が向上します。
  2. 感染の予防: ラバーダムは、口腔内の治療部位を隔離することで、周囲の組織や治療器具が血液や唾液などの感染源に触れるのを防ぎます。これにより、交差感染や治療部位の感染リスクを低減し、患者の安全を確保します。
  3. 患者の快適性: ラバーダムを使用することで、治療部位が乾燥し、患者の唾液や舌が接触しないため、治療中の快適性が向上します。また、口腔内の感覚過敏や不快感を軽減し、患者のストレスを軽減することができます。
  4. 材料の保護: ラバーダムを使用することで、口腔内の湿度や唾液の影響を受けずに、使用する材料や器具を保護することができます。特に接着剤やセメントなどの材料は、湿った状態で使用すると効果が低下するため、ラバーダムの使用が重要です。

総括すると、ラバーダムの防湿は歯科治療において重要な役割を果たします。感染の予防、治療の精度向上、患者の快適性の確保など、様々な面でその重要性が示されます。しかしこのラバーダム防湿ですが、おそらく導入している歯科医院は非常に少ないと思います。それは、単純に手間がかかることやコストがかかるためだと考えております。当院では、根管治療時、歯質が極度に少ない場合などを除いては、ラバーダム防湿を装着した状態で治療をしております。

しかし、根管治療後に再感染が起こる可能性もあります。例えば、不適切な詰め物の使用や根管の再感染が原因となります。

二つ目のポイントは、適合の良い補綴物(セラミック修復)を装着し、治療後の細菌の侵入を防ぐことです。

根管治療後の歯冠補綴の質が根管治療の質が根管治療の治療成績に大きく影響します。

治療後の細菌の侵入についてご説明いたします。折角治療中ラバーダム防湿をしっかり行って根管治療を行ってもその後の被せ物の質が悪いと根管治療が失敗につながる可能性があります。

ここで一つ根管治療の質と歯冠補綴の質が根管治療の治療成績にどのような影響を及ぼすかについて調べた論文をご紹介致します。

Periapical status of endodontically treated teeth in relation to the  technical quality of the root filling and the coronal restoration.

Ray HA,Trope M.

Int Endod J.1995;28 12-18

上記の論文では、いくら根管治療を十分に行っても、その後の歯冠修復が悪いと根管治療の成績が非常に低くなることを示しています。

根管治療後の歯冠補綴の質が根管治療の治療成績に影響する点はいくつかあります:

  1. 密封性と保護: 歯冠補綴物は、根管内部を保護し、再感染やバイオフィルムの形成を防ぐ役割を果たします。適切な歯冠補綴物が施されていない場合、根管内部に細菌や外部の刺激が侵入し、治療の効果が損なわれる可能性があります。
  2. 咬合の安定性: 歯冠補綴物は、咬合力を適切に分散し、歯を安定させる役割を果たします。不適切な歯冠補綴物が施されると、歯の応力分散が不均等になり、根管治療部位に過度の負荷がかかる可能性があります。
  3. 根管内の微小な空隙や欠陥の補修: 根管治療の際には、根管内部に微小な空隙や欠陥が残ることがあります。適切な歯冠補綴物が施されると、これらの空隙や欠陥を埋めることができ、再感染や歯の損傷を防ぐことができます。

上記の写真の銀歯と歯肉(歯茎)の境目の部分に注目して下さい。補綴物が不適合であることがわかると思います。

これでは治療後、根管内に細菌が侵入してしますのも容易に想像がつくと思います。

まとめると根管治療時にラバーダム防湿を行い、根管治療後は適合の良い補綴物(セラミック)にすることで根管治療の治療成績は格段に向上します。