- 2024.12.28
入れ歯が合わない、入れ歯が痛い、入れ歯をずっと装着できない方への解決策
皆様こんにちは。まこと歯科・矯正歯科の院長をしております木村誠です。
今回テーマは、「入れ歯が合わない、入れ歯が痛い、入れ歯をずっと装着できない方へ」です。
入れ歯は歯を失った方にとって、日常生活や食事をサポートする重要な役割を果たします。しかし、「入れ歯が合わない」「入れ歯が痛い」「長時間装着するのが難しい」という悩みを抱える方は少なくありません。この記事では、特に入れ歯に不具合が起こる原因を詳しく説明し、問題の解決方法も紹介します。
入れ歯に不具合が起こる原因
1.残存歯の抜歯による影響
部分入れ歯は、残っている健康な歯(残存歯)を支えにして機能します。この「残存歯」は、部分入れ歯の安定性や咬む力を支える重要な役割を果たします。しかし、残存歯が抜歯になってしまうと、部分入れ歯に大きな不具合が生じることがあります。
1. 部分入れ歯の金具(クラスプ)の仕組み
部分入れ歯は、歯ぐきだけでなく、残存歯に金具(クラスプ)を引っ掛けることで固定されています。この金具は:
- 入れ歯がずれないように支える。
- 咬む際の力を分散させる。
つまり、金具が正しく機能するためには、残存歯が健康でしっかりしていることが必要です。
初診時 前歯にブリッジによる被せ物がされていました。
前歯のブリッジ脱離で来院された時の状態。
2. 歯並びの悪い状態で入れ歯を作製した場合
歯を失った際、残っている歯が不揃いな位置にあると、入れ歯を設計する際に問題が生じることがあります。特に以下の状況が入れ歯の不具合につながります:
- 咬み合わせの不一致:歯並びが乱れていると、入れ歯がしっかり固定されず、咬む際に痛みやズレが生じます。
- 入れ歯の安定性が低下:歯並びが不揃いだと、入れ歯をしっかり支えるポイントが減少し、ずれやすくなります。
このような問題は、入れ歯を作る前に歯並びや顎の状態を整える処置を行わないと、長期的に不快感を引き起こします。
2. 入れ歯の使用による人工歯の摩耗や破損
義歯の人工歯の部分に摩耗や破損を認めます。
こちらは、人工歯の摩耗だけではなく、天然の歯も摩耗を生じている。
入れ歯の人工歯は、自然の歯と同じように日々の使用で少しずつ摩耗します。特に、硬いものを咬む頻度が高い場合、以下の問題が発生します:
- 摩耗による噛み合わせの低下:人工歯がすり減ることで、食べ物をしっかりと砕けなくなります。その結果、柔らかいものしか食べられなくなるなど、食生活に支障をきたします。
- 人工歯の破損:摩耗が進むと、人工歯が割れることがあります。破損したまま使用するとさらに噛み合わせが悪化し、痛みの原因にもなります。
人工歯の摩耗や破損を放置すると、入れ歯の機能が低下し、日常生活に大きな影響を及ぼします。
解決策
3. 顎の骨が経年的に痩せる
歯がない状態が長く続くと、顎の骨が徐々に痩せてしまう「骨吸収」が起こります。この骨吸収は、入れ歯が合わなくなる大きな原因です。
すれ違い咬合で、左上の天然の歯(レントゲンの水色の楕円で囲った部分)の咬合力により左下の部分の歯槽骨が高度に吸収(黄色の線が正常の時の骨の高さ、赤色の線が骨吸収を起こしている実際の歯槽骨の高さのレベル)しています。
- 顎の骨の減少:骨が痩せると入れ歯の支えが失われ、入れ歯がズレやすくなります。また、歯ぐきが薄くなることで、装着中に痛みを感じることが増えます。
- 入れ歯の安定性の低下:顎骨の形状が変わると、初めは合っていた入れ歯が時間とともにズレたり浮いたりします。
このような顎の変化は加齢とともに進行するため、入れ歯の定期的な調整やメンテナンスが欠かせません。
4. 咬合力(噛む力)が強く、入れ歯の床の部分が歯茎に食い込む
部分入れ歯の咬合力が強い方が抱える問題:粘膜への負担と痛み
部分入れ歯を使用している方で、咬合力(噛む力)が強い場合、入れ歯の床(義歯床)が歯ぐきの粘膜に大きな負担をかけ、痛みや不快感が生じることがあります。この問題について、原因と影響をわかりやすくまとめました。
1. 咬合力が強いとどうなるのか?
咬合力が強い場合、以下のような負担が粘膜にかかります:
- 義歯床(入れ歯の土台部分)が歯ぐきに過剰な圧力を与える
入れ歯は咬む力を歯ぐきや顎骨に分散させる仕組みですが、咬合力が強いと圧力が集中しやすく、粘膜が圧迫されます。 - 粘膜に炎症が生じる
繰り返し強い力が加わると、歯ぐきの粘膜に赤みや腫れ、さらには潰瘍(口内の傷)ができることがあります。
5. 入れ歯の金具がかかる歯の形が金具をかけるには、適していない場合
問題を放置するとどうなるのか?
入れ歯の不具合をそのままにしておくと、以下のような影響が現れます:
- 食事が制限される:硬いものが咬めないため、食事の選択肢が狭まり、栄養不足の原因になることがあります。
- 話しにくくなる:入れ歯が安定しないと、発音が不明瞭になったり、話す際に不安定さを感じたりします。
- 生活の質の低下:食事や会話が不自由になることで、外出や人との交流を避けるようになり、生活の質が低下する可能性があります。
解決方法
1. 定期的な入れ歯の調整や修理
入れ歯は使用状況や顎の変化に応じて調整が必要です。痛みやズレを感じた場合は、早めに歯科医院で調整を受けることをおすすめします。
2. インプラント治療を検討する
顎の骨にインプラントを埋め込み、入れ歯を固定する方法です。この方法は入れ歯のズレを防ぎ、安定性を高めます。特に顎の骨が痩せてしまった方に有効です。
3. 精密義歯の作製
治療前
精密義歯装着時
精密な型取りや設計を行い、患者さん一人ひとりの顎や歯ぐきに完全にフィットする入れ歯を作製します。これにより痛みや不快感が軽減されます。
精密義歯の欠点について
精密義歯は、非常に高いフィット感と快適性を提供し、審美性や機能性にも優れています。しかし、いくつかの欠点もあり、特に以下の2つが患者さんにとって大きな課題となることがあります。
1. 残存歯が抜歯になると義歯が不安定になる
精密義歯は、患者さん一人ひとりの口腔環境に合わせて細かく設計されています。そのため、装着時のフィット感や機能性は抜群です。しかし、精密義歯も残存歯を支えにしていることが多く、次のような問題が起こる可能性があります:
- 残存歯が抜歯されると設計が崩れる
支えとなる歯が失われると、義歯の安定性が低下し、ズレや浮き上がりが発生します。 - 再調整や修理が必要
残存歯の抜歯によって義歯がうまく機能しなくなるため、調整や修理、場合によっては新しい義歯の作製が必要になることがあります。
2. 義歯を新製する費用がかかる(ランニングコストの問題)
精密義歯は非常に精巧に作られるため、作製費用が高額です。そして、次の理由からランニングコストがかさむことがあります:
- 新たな義歯の作製が必要になることがある
残存歯が抜歯されたり、顎骨や歯ぐきの形が経年的に変化した場合、義歯の修理だけでは対応できず、新製する必要がある場合があります。 - メンテナンス費用がかかる
精密義歯は長期間使用するためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。これには調整費用やクリーニング費用が含まれます。
まとめ:精密義歯の注意点
- 残存歯が抜歯されるリスクに備え、歯のケアを徹底することが大切です。また、残存歯が失われた場合は、新しい義歯や他の治療法を検討する必要があります。
- 高額な費用とランニングコストについて事前に理解しておくことが重要です。長期的な視点で費用対効果を考えるとよいでしょう。
精密義歯は非常に優れた治療法ですが、その特性や欠点をしっかりと理解した上で、歯科医師と相談しながら最適な選択をすることが重要です。
まとめ
入れ歯の不具合の原因には、歯並びの悪さや人工歯の摩耗、顎骨の変化が大きく関与しています。しかし、これらの問題は適切な治療やメンテナンスによって改善することが可能です。もし入れ歯に関する悩みがある場合は、インプラント治療をまず考え、全身疾患などにより外科処置が難しい方は、精密な入れ歯の作製を検討します。