- 2024.12.22
被せ物(セラミックなどの)の根元や歯茎の変色が気になる方へ
被せ物(セラミックなど)の根元や歯茎の黒ずみ・変色が気になる方へ
まこと歯科・矯正歯科の院長を務めております木村誠です。今回は上記のテーマを取り扱います。
被せ物の根元や歯茎の黒ずみ・変色は、多くの方が抱えるお悩みの一つです。その原因の多くは、**歯茎の下がり(歯肉退縮)**によるものです。歯肉退縮が進むと歯根が露出し、特にセラミックや金属を使用した被せ物の根元部分が暗く見えることがあります。
また、歯茎の黒ずみはメタルタトゥーが原因で起こる場合もあります。メタルタトゥーとは、金属の土台(メタルコア)を削った際に発生する削り粉が歯茎に入り込み、色素沈着を引き起こす現象です。このような場合、歯茎が黒く見える原因は歯肉退縮だけではなく、内部に残った金属片が影響していることがあります。
この記事では、歯茎の黒ずみの原因である歯肉退縮とメタルタトゥー、それぞれの治療法について詳しく解説します。
1. 歯肉退縮が見た目に与える影響
歯茎が下がることで次のような見た目の問題が生じます:
- 歯根の露出による黒ずみ
歯の根元は歯冠部分(白いエナメル質)とは異なり、象牙質と呼ばれる黄色みを帯びた層で構成されています。歯茎が後退すると、この象牙質が露出し、被せ物の色と対比して暗く見えることがあります。
黄色の丸で囲った部分は歯茎が下がったことで歯根部が露出し、暗く変色しているように見えます。
- 被せ物の金属部分の露出
セラミッククラウンなどで内部に金属を使用している場合、歯茎が下がることで金属部分が見えてしまい、黒ずみや変色の原因になります。
歯茎下がりによる黒ずみの治療法:根面被覆術
① 根面被覆術とは?
根面被覆術は、後退した歯茎を補い、露出した歯根部分を覆う治療法です。この処置により、歯茎の美しさを回復するとともに、象牙質の露出による黒ずみを改善します。また、歯肉の再生を促進し、健康的な歯茎を取り戻す効果があります。
② 根面被覆術の手法
主に以下の方法で行われます:
-
結合組織移植術
口蓋から結合組織のみを採取し、歯茎の退縮部分に移植します。審美性が高く、自然な仕上がりになるのが特徴です。
結合組織移植術は上顎の口蓋部から主に採取し、受容床に移植します。
-
遊離歯肉移植術
患者自身の口蓋から歯茎の組織を採取し、露出した歯根部分に移植します。この方法は安定した結果を得やすく、広範囲の歯茎再生に適しています。
③ 根面被覆術のメリット
- 審美性の向上
歯茎のラインが整い、自然で美しい見た目が回復します。 - 知覚過敏の改善
象牙質が露出している場合でも、歯茎で覆うことで冷たいものや熱いものに対する過敏反応が緩和されます。 - 健康的な歯茎の再生
炎症を軽減し、歯茎の機能を取り戻します。
治療後のケアの重要性
根面被覆術の効果を長く保つためには、日常のケアが非常に重要です。
- 正しい歯磨き習慣
柔らかい歯ブラシを使用し、力を入れすぎないように注意します。また、歯科医や歯科衛生士から正しいブラッシング方法の指導を受けることが推奨されます。 - 定期的な歯科検診
歯茎や歯周組織の状態を定期的にチェックし、問題があれば早期に対応します。 - 喫煙の回避
喫煙は歯茎の血流を悪化させ、治療効果を低下させる要因となります。禁煙を心掛けましょう。 - ストレス管理
歯ぎしりや食いしばりの原因となるストレスを軽減することも大切です。ナイトガードの使用も有効です。
2.金属片の沈着(メタルタトゥー)による歯肉の変色とは?
メタルタトゥーは、歯科治療に使用された金属の微小な破片(削り粉)が歯肉組織に入り込むことで起こる色素沈着です。金属片が歯肉に沈着すると、歯茎に黒っぽい斑点や変色が現れ、見た目に影響を与えます。この現象は、特に金属製の土台(メタルコア)やクラウンを使用した治療後に見られることがあり、審美的な悩みの原因となります。
見た目に与える影響
黄色で囲んだ部分が黒く変色しています。これは、メタルタトゥーと言って、金属片が歯茎に入り込んでできる変色です。
メタルタトゥーは主に次のような見た目の問題を引き起こします:
- 歯茎の黒ずみ
歯肉が黒っぽく変色し、健康的なピンク色が失われます。この変色は局所的であることが多いですが、目立つ部分に発生すると特に気になります。歯を抜歯してもこの黒ずみは取れません。 - 審美性の低下
笑ったときや話しているときに黒ずみが見えることで、見た目に自信を失ったり、他人の視線を気にするようになる方が多いです。
- 被せ物の審美性に影響
セラミックなどの美しい被せ物を使用していても、金属片による変色が歯茎に影響すると、全体の印象が損なわれます。
メタルタトゥーの原因
メタルタトゥーは、主に以下の要因で発生します:
上記の金属の土台(被せ物の中にある構造体)が装着されている様子。金属(特に保険治療で用いいる銀合金)は、溶出し歯茎や歯根を黒変させてしまいます。
- 金属製の土台(メタルコア)の使用
銀合金や金属を使った土台(メタルコア)は、長期間使用することで微小な金属成分が溶け出し、歯肉に沈着することがあります。 - 治療中の金属削り粉の混入
メタルコアやクラウンの調整中に削り粉が発生し、これが歯肉に入り込むことで色素沈着が起こります。特にラバーダム(口腔内の保護膜)を使用しない場合にリスクが高まります。
メタルタトゥーの治療法
メタルタトゥーによる変色は自然には改善しないため、専門的な治療が必要です。主な治療法を以下に紹介します:
1. レーザー治療
- 内容: メタルタトゥー部分の歯茎をレーザーで除去し、色素沈着を取り除く方法です。
- 効果: 症状が軽度の場合に有効で、歯茎の黒ずみをピンポイントで改善します。
- メリット: 痛みが少なく、治癒が早い。
2. 歯肉切除術
上記写真右側の歯が欠損している部分の歯茎に黒い変色を認めます。メタルタトゥーは抜歯をしても消えません。
インプラントを埋入する際、黒く変色した歯茎を取り除きました。
- 内容: 沈着した金属片を含む歯茎の部分を外科的に除去し、健康な歯茎に置き換える治療法です。
- 効果: 重度の色素沈着に適しており、確実に改善できます。
- 注意点: 外科処置であるため、術後のケアが重要です。
3. 歯肉移植術
治療前
治療後
- 内容: 口蓋(上顎の内側)から健康な歯肉組織を採取し、変色した部分に移植する方法です。
- 効果: 審美性の高い仕上がりが得られるため、前歯など目立つ部分に適しています。
4. 金属製補綴物の交換
上記写真は、ファイバーコアという金属を使用しない土台を用いることでメタルタトゥーにならないようにすることができます。
- 内容: メタルコアや金属クラウンをセラミックやジルコニアなどのメタルフリー素材に置き換える方法です。
- 効果: 金属を使わないことで新たな沈着を防ぎ、審美性を向上させます。
メタルタトゥーを防ぐための予防策
治療だけでなく、メタルタトゥーの発生を予防することも大切です。以下のポイントを押さえましょう:
- メタルフリー治療の選択
メタルコア特に保険治療で用いる銀が主体の土台に金属を含まない材料を使用することで、金属片の沈着リスクを大幅に減らせます。 - 治療時の適切な保護
ラバーダムや口腔内保護器具を使用し、治療中に金属削り粉が歯茎に付着しないようにします - 信頼できる歯科医の選択
技術と経験のある歯科医を選ぶことで、メタルタトゥーのリスクを最小限に抑えられます。
まとめ
歯茎下がりによる黒ずみや変色は、歯肉退縮と歯根の露出が主な原因です。根面被覆術などの適切な治療を受けることで、歯茎の健康を取り戻し、見た目の悩みも解消できます。またメタルタトゥーによる歯肉の変色は、金属削り粉や補綴物の摩耗が原因で起こる審美的な問題ですが、適切な治療で改善可能です。レーザー治療や歯肉移植術、メタルフリー素材への交換など、状況に応じた治療を選択することで、健康的で美しい歯茎を取り戻すことができます。お悩みを感じたら、当院までお気軽にご相談頂けますと幸いです。健康的で美しい笑顔を取り戻すための第一歩です。