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  • 2024.10.12

歯髄(神経)を保存する治療(歯髄保存療法)

歯髄(神経)を保存する治療(歯髄保存療法)

皆様こんにちは。まこと歯科・矯正歯科の院長をしております木村誠です。

今回は、重度に進行した虫歯に対して、MTAというセメントを用いて歯髄(神経)の保存を行う治療法についてご紹介させて頂きます。

上記の写真は、治療前の写真です。一見すると虫歯はないように見えます。

しかしレントゲンを撮影し診査すると、黄色の丸で囲った部分が透過像(黒く写っている)になっており、歯髄(神経)にかなり近接した部分まで虫歯が進行していることが予想されます。

削って、う蝕検知液という虫歯の部分を選択的に染める薬液で虫歯の範囲を確認していきます。

※当院では、必要最小限で虫歯を取り除くことができると言われているNISHIKAのCariesCheckという製品を使用して、極力正常な歯質を保存できるように努めております。

日本歯科薬品のホームページから写真を引用

赤く染まっている部分は、すべて除去する必要があります。今回の症例のように虫歯が歯髄に近い部分まで進行している場合は、下記のスプーンエキスカベータという手用の器具で細かく虫歯を除去していき、必要以上に歯を削らないで済むような工夫をしております。

GCホームページから引用

虫歯を完全に除去した状態です。良く見て頂くと歯髄(神経)が露出していることがわかります。この状態まで虫歯が進行している場合、従来は歯髄(神経)を保存するのが難しい状態でした。

しかし現在は、MTAセメントで封鎖することで、多くの歯髄を保存することができるようになってきました、

実際MTAセメントで封鎖した状態です。

当院では、歯髄保存療法を行う際は、操作性などがよいYAMAKIN社製のMTAを使用しております。

その後自発痛などは出ず、経過良好であったため、セラミックにて最終修復を行いました。

銀歯は、精密さにかけるため、歯と銀歯の隙間から唾液が侵入してしまい、折角保存した歯髄が炎症を起こす可能性が高くなります。そのため当院では適合が良く歯にしっかりと接着させることができるセラミックで最終修復をするようにしております。

MTAセメント(Mineral Trioxide Aggregate)は、歯科治療で広く使用されている生体親和性の高いセメントで、特に歯髄保存治療や根管治療において重要な役割を果たします。1990年代に開発されて以来、その効果と安全性が評価され、多くの歯科治療で用いられています。以下に、MTAセメントの効果と主な特徴について詳しく説明します。

1. 生体親和性が高い

MTAセメントは、組織に対して刺激が少なく、歯髄や周囲の組織に良好に適合します。歯髄保存療法や根管治療で使用される際、炎症を抑え、組織の修復を促進する効果があるため、長期的な予後が良好です。

2. 封鎖性が優れている

MTAセメントは非常に優れた封鎖能力を持っています。これにより、細菌やその産生物が根管内に再侵入するのを防ぎ、再感染リスクを低減します。この封鎖性の高さは、根尖封鎖(根管治療の最終的な充填)や穿孔修復(歯根が損傷した場合の修復)に特に効果的です。

3. 硬組織形成を促進

MTAセメントは、歯髄の細胞や骨芽細胞の分化を促進し、硬組織(骨や象牙質)の再生を助けます。このため、歯髄保護や歯髄再生療法において広く利用されています。例えば、歯髄が露出してしまった場合や、深い虫歯治療の際に、MTAセメントを使うことで歯髄が健康に維持され、新たな象牙質が形成されることが期待できます。

4. 耐久性と安定性

MTAセメントは湿気や血液などの環境下でもその効果を発揮するため、口腔内の湿潤環境に強く、長期間にわたり安定した状態を保つことができます。また、材料自体が硬化する際に少し膨張する特性があり、これが封鎖性を高める一因となっています。

5. 抗菌作用

MTAセメントはアルカリ性を示し、この特性によって抗菌作用を持つとされています。高いpHが細菌の増殖を抑制するため、感染部位に使用された場合でも感染の拡大を防ぐ効果が期待できます。

6. 幅広い用途

MTAセメントは、以下のような幅広い歯科治療に使用されます。

  • 歯髄覆罩(しはいふくしょう):歯髄が露出した際に、それを保護し、再生を促す。
  • 根尖閉鎖:根管治療後に根尖(歯根の先端)を封鎖し、感染を防ぐ。
  • 穿孔修復:歯根や歯の内部が損傷した際の修復。
  • 逆根管治療:外科的に根管を封鎖する際の材料として。

MTAセメントのデメリット

一方で、MTAセメントにはいくつかのデメリットもあります。例えば、硬化時間が比較的長く(2~4時間)、治療に時間がかかることや、他の歯科材料に比べてコストが高いことが挙げられます。また、硬化後の物理的な強度が他の材料に比べて低いという報告もあるため、使用する部位や状況によっては慎重に選択する必要があります。

まとめ

MTAセメントは、歯科治療において非常に有用であり、生体親和性が高く、硬組織形成や抗菌作用、優れた封鎖性など、さまざまな効果があります。特に歯髄保存療法や根管治療において、その効果が顕著であり、治療の予後を大きく改善することが期待されます。

歯髄(神経)を失った歯は、歯髄がある歯に比べ、歯根破折などにより抜歯なる可能性が高くなります。虫歯や歯周病はある程度予防ができますが、歯根破折は予防ができません。この歯髄保存療法は、歯を守る腕で非常に価値のある治療法です。