- 2024.05.27
保険治療と自費治療との違い(被せ物編)①
皆様こんにちは。まこと歯科・矯正歯科の院長をしております木村誠です。
今日は、保険治療と自費治療との違い(被せ物編)①というテーマでブログを書きます。
自費治療は、保険治療に比べ、一般的に高額です。では、なぜ高額なのか、保険治療と自費治療とでは、どこに違いがあるのかについて詳しく説明していきます。
まず被せ物(冠)を作製する過程を簡単に説明いたします。
歯を削って形を整える→印象(型取り)→咬合採得(噛み合わせの型)→石膏模型を作製→技工士さんが補綴物を作製するという大まかな流れがあります。
保険治療と自費治療とでは、各工程で違いがあり、それが上記の一連の作製過程で、最後には、大きな違いが出てきます。
それでは、一つずつの過程を説明していきます。
印象(型取り)の違い
まずセラミック(自費)補綴の型取りでは、2重圧排といって、歯と歯茎の間に2本の糸を挿入し、シリコン(ゴム)で印象(型取り)を行います。
歯と歯茎の間に糸を挿入することで、歯茎が一時的に広がり、そこに型取りの材料が流れていくことで歯茎の下の歯根の形態まで模型に再現できるようになります。
シリコンは、基本的に水とは相性が良くないため、血などの水分を徹底的に排除する必要があります。そのため、糸に止血剤を染み込ませて圧排することで、歯茎からの出血などを抑え、綺麗な型とりができるようになります。
上記の写真は、印象(型取り)直前の状態です。型を取ろうとしているところの歯の周りに水色の圧排糸が入っています。水色の糸の下には、もう一本糸が挿入されており、型を撮る際に上の糸のみを取り、型をお取りします。
これを2重圧排と言って、歯と歯茎の間の溝の部分に糸を2本挿入し、歯の周囲の細部をきちんと型取りする工夫です。シリコン印象では、必須のものとなります。簡単そうに見えて、技術を必要とします。
歯肉を物理的に圧排し、歯と歯肉の間の空間を広げることで、印象材が歯肉縁下の部分までしっかりと入り込み、精密な型取りが可能となります。これにより、微細な歯肉縁下の形状を正確に捉えることができます。
型取り後、歯科用石膏を用いて模型を作り、お口の中の状況を再現します。
上記の写真は、模型ができた時の状態ですが、模型では、歯と歯茎は色の違いがないため、それらの境界を明瞭にするために先ほどの2重圧排という操作が必要になるのです。そして歯茎の中の歯根の形態が再現されることで、被せ物がより自然で適切な形態を作れるようになるのです。この歯と歯茎の境界部分が曖昧だと、作成された補綴物が適合しない、あるいは適合が悪くなる可能性があります。
歯科で型を取る際、シリコン印象材がアルジネート印象材より優れている理由は多岐にわたります。以下にその主要な点を詳しく説明します。
1. 寸法安定性
上記の写真は主に保険治療で用いられる寒天・アルジネート印象
シリコン印象材は寸法安定性が高く、時間が経っても形が変わりにくい特徴があります。これにより、型取り後の変形が少なく、正確な模型を作成することが可能です。一方、アルジネート印象材は水分を含んでいるため、乾燥や吸湿により寸法が変わりやすく、短時間で変形が始まります。
2. 細部再現性
上記の写真は、j寒天・アルジネート印象に石膏を用いて作った模型(基本的に歯茎の中は、型が取れないため、歯と歯茎の境界が不明瞭であったり、歯茎の中の歯根の形態も再現することが難しい)
シリコン印象材は非常に細かいディテールまで再現する能力があります。これにより、歯や歯周組織の微細な形状を正確に記録することができます。アルジネート印象材もある程度の細部再現性を持っていますが、シリコンほどの精度はありません。
噛み合わせの型(咬合採得)の違い
自費治療用のシリコン材で採った噛み合わせの型。歯の噛み合わせの部分にある溝もしっかりと綺麗に取れます。
主に保険治療で用いられるワックスで採った噛み合わせの型。強度が低く、熱や外力により容易に変形します。また細部の再現性に欠けるため、口腔内の状況を正確に再現することが難しい。