- 2024.04.13
上顎の奥歯の部分に骨が少ないと説明を受けた方へ(ショートインプラントについて)
皆さんこんにちは。まこと歯科矯正歯科院長の木村誠です。
今日は、「ショートインプラント」というインプラント治療について説明します。
ショートインプラントとは、文字通り短いインプラントのことを指します。一般的には、長さが7mm以下のインプラントであることが多いです。短い分、直径を大きくすることで、骨に接する表面積を通常のインプラントと同程度にすることができます。
インプラントを奥歯にする時、上顎であれば上顎洞(副鼻腔)、下顎であれば下歯槽神経(下顎の中を走行する神経)までの距離が短いとき、大きな手術になったりもしくは、インプラント治療そのものが難しい場合もありました。
このようにショートインプラントは、骨量が不足している場合や他の制約がある場合に有用です。その有効性は以下のような点にあります:
- 骨量不足の解決: 長いインプラントを挿入する十分な骨量がない場合、ショートインプラントは骨量不足の問題を解決するための選択肢となります。
- 手術の回避: ショートインプラントは、骨の補填や移植を必要とせずにインプラント手術を行うことができるため、患者にとってより簡単な手術プロセスを提供します。
- 手術時間の短縮: ショートインプラントの挿入は、一般的に手術時間を短縮し、回復時間を短縮します。これは患者にとって利点となります。
- 固定の安定性: ショートインプラントは、適切に選択され、適切な手技で挿入されれば、固定した状態で適切な咬合圧に耐える安定性を提供します。
ここで当院にてショートインプラントを用いてインプラント治療を行った症例をご紹介致します。
40代の女性で右上のの虫歯を治療希望で当院に来院されました。
術前のレントゲン像
重度の虫歯により抜歯の適応でした。
抜歯をして粘膜が治癒した状態の口腔内写真
術後の口腔内写真
術後のレントゲン写真
上顎洞までの骨量が少ない状態でした。通常のインプラントであれば、大幅な骨増生が必要な状態でしたが、ショートインプラントを用いたことで、必要最小限の骨増生で治療を終えることができました。
この症例のようにショートインプラントを用いることで、低侵襲(患者様への身体に対する負担が少ない)で治療を終えることができます。
ただし、ショートインプラントにはいくつかの制約もあります。骨量や品質、周囲の組織の状態などが考慮される必要があります。治療の適応とリスクを検討する上で、患者と歯科医師の相談が重要です。
特に上顎は下顎の骨に比べ、一般的に骨が柔らかいため、インプラントの固定が取りにくいことがあります。
そのため、ショートインプラントを使用する場合は、様々な工夫が必要になります。その一つがOsseodensificationという方法です。
Osseodensification(骨密度化)は、インプラント手術中に使用される技術の1つであり、骨の密度を高め、骨の再生を促進することを目的としています。この手法は、従来の骨を削る方法とは異なり、骨を圧縮しながら穴を拡大することで骨密度を増加させるものです。その有用性は以下のような点にあります:
- 骨密度の向上: Osseodensificationは、骨を圧縮しながら拡大することで、周囲の骨の密度を増加させます。これにより、インプラントがより安定した状態で統合しやすくなります。
- 骨の再生を促進: 圧縮による微小な骨の創傷は、骨の再生を促進する可能性があります。これにより、手術後の骨の治癒が速くなる場合があります。
- 適応の拡大: Osseodensificationは、骨の質や量が不足している場合に特に有用です。従来の方法ではインプラント挿入が難しい場合でも、この手法を使用することで治療の選択肢が広がります。
- 手術時間の短縮: Osseodensificationは、通常の骨削りよりも手術時間が短縮されることがあります。これにより、患者の快適性や手術の効率が向上します。
- 予測性の向上: Osseodensificationは、インプラント手術の予測性を向上させる可能性があります。骨密度化によってより一貫した結果が得られるため、手術の成功率が向上する可能性があります。
ただし、この手法も適応や患者の状態によっては適さない場合があります。歯科医師は患者の状態を十分に評価し、最適な治療計画を立てる必要があります。
当院では、上顎に骨量が少ない場合、様々な治療オプションを駆使し、年齢などを考慮したインプラント治療を行っております。