歯周病治療

  • 2024.10.23

知覚過敏、歯茎下がりを治療した症例(根面被覆)。

  • Before

    知覚過敏、歯茎下がりを治療した症例(根面被覆)。

    治療前

  • After

    知覚過敏、歯茎下がりを治療した症例(根面被覆)。

    治療後 

患者 40代女性
主訴・ニーズ 奥歯が冷たいものを食べた時にしみる。
診断名・症状 歯肉退縮
治療内容・治療費(自費診療) 根面被覆術
治療費総額 110,000円
治療期間 半年
来院頻度 月1回程度 手術後1か月間は、週1回程度
リスク・副作用 根面被覆術(こんめんひふくじゅつ)は、歯の根が歯ぐきから露出してしまった際に、歯ぐきを再生させて根面を覆うための外科的治療法です。主に歯肉退縮による歯の根の露出を治療するために行われ、歯の見た目や歯の健康を改善するための有効な方法です。しかし、外科的処置であるため、いくつかのリスクや副作用が伴います。以下に詳しく説明します。 1. 痛みや不快感 手術後に痛みや不快感が生じることは一般的です。特に、歯肉組織を移植した場合、移植部位とドナー部位(口腔内の別の部分から採取した場合)の両方で痛みが出ることがあります。痛みは一時的であり、鎮痛薬で対処できますが、数日から1週間程度続くことがあります。 2. 腫れや炎症 術後、歯ぐきや周囲の組織が腫れることがあります。これは体の自然な反応であり、炎症が軽度であれば通常、数日以内に改善します。ただし、腫れが長引く場合や悪化する場合は、感染の兆候である可能性があるため、速やかに歯科医の診察を受ける必要があります。 3. 感染 手術後の感染リスクは常に存在します。適切な衛生管理や抗生物質の処方が行われることが一般的ですが、感染症が発生すると、痛み、腫れ、発熱などの症状が現れることがあります。感染は、処置部位や周辺組織の治癒を遅らせることがあるため、早期の対処が必要です。 4. 手術部位の失敗(治療結果が不完全) 根面被覆術では、歯肉が完全に根面を覆うことが目的ですが、必ずしも成功するとは限りません。治療の結果として、以下のような不完全な結果が出る可能性があります。 歯肉の再退縮: 手術後、歯肉が再び退縮し、根面が再び露出することがあります。特に、患者が術後の口腔ケアを徹底しなかった場合や、歯肉に過剰な負担がかかった場合に起こりやすいです。 不十分な被覆: 移植された歯肉が予想以上に少なく、根面が完全に覆われないことがあります。この場合、追加の治療が必要になることもあります。 5. 知覚過敏 手術後に知覚過敏が生じることがあります。特に、根面が長期間露出していた場合、根の部分が敏感になっていることが多く、手術による刺激や治癒過程で過敏感が一時的に悪化することがあります。この症状は通常、時間とともに改善しますが、場合によっては知覚過敏の治療が必要となることがあります。 6. 歯肉の色や質感の違い 移植された歯肉は、元々の歯肉とは色や質感が異なることがあります。特に、別の部分から採取された歯肉を移植した場合、歯ぐきの色が少し違って見えることがあります。これは審美的な観点から問題になることがあり、患者によっては見た目に満足できない場合もあります。 7. 術後の歯肉の薄さや弱さ 移植した歯肉が十分に厚みを持たない場合、術後に歯肉が薄く、もろい状態になることがあります。この場合、歯肉が将来的に再び退縮するリスクが高くなります。歯肉が薄いと、外部からの刺激(歯ブラシや硬い食べ物など)に対しても弱くなり、ケアが難しくなることがあります。 8. アレルギー反応や薬物反応 手術中に使用される麻酔薬や術後の処方薬(抗生物質や鎮痛剤)に対してアレルギー反応を起こすリスクがあります。アレルギー反応は軽度のものから、重篤なものまで様々ですが、手術前に必ず歯科医にアレルギー歴や薬剤に対する反応を伝えることが重要です。 9. 傷跡や瘢痕組織の形成 手術後に歯肉に瘢痕(はんこん)組織が形成されることがあります。瘢痕組織は通常の歯肉とは異なり、弾力性や感触が変わることがあります。また、瘢痕組織が目立つことで、見た目に影響を与えることがあります。 10. 歯の長さの変化 歯肉が再び退縮すると、歯の根が再び露出し、歯が長く見えるようになることがあります。これは特に前歯で目立ちやすく、審美的な問題になることがあります。 まとめ 根面被覆術は歯肉退縮を改善し、歯の健康や審美性を向上させる効果的な治療法ですが、痛み、腫れ、感染、知覚過敏、治療失敗のリスクなど、さまざまな副作用やリスクが伴います。患者さんは、手術前にこれらのリスクについて歯科医から十分な説明を受け、術後のケアを徹底することが大切です。

皆様こんにちは。まこと歯科・矯正歯科の院長をしております木村誠です。

今回は、歯茎か下がったことで、歯根が露出し、近く過敏を起こしている患者様に対し、根面被覆を行った症例をご紹介致します。

※面被覆(こんめんひふく)は、歯ぐきが後退して歯の根っこの部分が露出してしまったときに、その露出した部分を歯ぐきで覆うための治療です。歯ぐきが下がると、歯の根が見えてしまうことで、見た目が気になったり、冷たいものがしみたり、虫歯になりやすくなったりすることがあります。この治療では、歯ぐきを元の位置に戻したり、口の中の別の部分から歯ぐきを移植して覆ったりして、露出した歯の根を保護します。

上記の写真は、右上の奥歯が、冷たいものを食べた時にしみるということを主訴に来院された患者さんの口腔内写真です。

右上の犬歯から大臼歯に至るまで軽度の歯茎下がりを認めます。歯茎が下がり、歯根の一部が口腔内に露出すると知覚過敏症状(冷たいものがしみる、場合によっては熱いものでもしみる)を生じることがあります。

歯根露出による知覚過敏の治療としては、歯根表面に薬剤を塗布することで、神経への刺激を遮断するのが第一選択となります。

改善が見られない場合、歯肉の一部である結合組織をの移植を伴う根面被覆という治療を行います。

今回は、根面被覆をする範囲が広いため、移植する結合組織を口蓋の両側から採取しました。

根面被覆の手術の方法の中から、今回はVISTAテクニックという方法を用いて治療しました。

Before

After

ほぼ完全に歯根部は歯肉によって覆われ、知覚過敏症状も消失しました。

当院では、知覚過敏の治療の1つの方法として根面被覆もしております。もし知覚過敏でお悩みの方がいらっしゃいましたら、当院までお気軽にご相談下さい。

最後に根面被覆の適応症についてまとめます。

根面被覆術(こんめんひふくじゅつ)は、歯肉退縮により露出した歯の根(根面)を覆うための外科的治療です。この治療が必要になるケース(適応症)には、いくつかの明確な基準があります。以下に、根面被覆が適応される主な状況を詳しく説明します。

1. 歯肉退縮による審美的な問題

歯肉退縮があると、歯の根が見えてしまい、歯が長く見えたり、不自然な歯並びに見えることがあります。特に前歯での退縮は、笑ったときや話したときに歯ぐきのラインが目立ち、審美的に問題を感じることがあります。こうした見た目の改善を目的として、根面被覆術が行われます。

2. 知覚過敏

歯肉退縮によって露出した歯の根(象牙質)は、外部の刺激に非常に敏感です。冷たいものや熱いもの、酸性の飲食物などに対して鋭い痛みを感じる知覚過敏が生じやすくなります。この知覚過敏を改善するために、歯の根を再び歯ぐきで覆う根面被覆術が適応されます。

3. 虫歯(根面う蝕)の予防

露出した歯の根は、エナメル質がなく、象牙質がむき出しの状態です。象牙質はエナメル質よりも酸に弱いため、虫歯(根面う蝕)が発生しやすくなります。歯肉退縮が進むと、歯の根が虫歯になりやすい状態になるため、これを予防する目的で根面被覆が適応されることがあります。

4. 歯周病の進行による歯肉退縮

歯周病が進行すると、歯肉が炎症を起こして後退し、歯の根が露出します。この状態では、歯を支える歯周組織もダメージを受けていることが多く、さらに退縮が進むリスクがあります。歯周病が原因で歯肉が後退している場合、歯周組織の保護炎症の進行を防ぐために根面被覆術が行われることがあります。

5. 外傷による歯肉退縮

外的な刺激やケガ、強すぎる歯磨き(ブラッシング圧)によって歯肉が後退することがあります。このような物理的なダメージによる歯肉退縮も、根面被覆の適応症です。例えば、ブラッシング時に歯ぐきが削られてしまうことが原因となることがあります。

6. 矯正治療後の歯肉退縮

矯正治療後に歯肉が後退してしまうことがあります。矯正治療で歯を動かす際、歯にかかる力が強すぎたり、不適切な方向にかかったりすると、歯ぐきが後退することがあります。この場合、歯の健康を守り、見た目を改善するために根面被覆が適応されます。

7. インプラント治療後の歯肉退縮

インプラントを入れた後に歯肉が退縮し、インプラントの金属部分が露出することがあります。このような場合も、見た目を改善するために根面被覆術が用いられることがあります。

8. 歯の支持組織が比較的健康であること

根面被覆術は、歯周組織(歯を支える歯ぐきや骨)がまだ比較的健康である場合に適応されます。重度の歯周病が進行している場合や、歯を支える骨が大きく失われている場合は、手術の成功率が低くなるため、適応されないこともあります。歯の根を覆うためには、ある程度健康な歯肉と骨の状態が必要です。

9. 口腔衛生が良好であること

根面被覆術は、手術後のケアが非常に重要です。患者がしっかりとした口腔衛生を保てることが前提となります。口腔衛生が不十分だと、手術後に再び歯肉が退縮したり、感染が起こるリスクが高まります。そのため、手術後のケアができる患者に対して行われます。

まとめ

根面被覆術は、歯肉退縮による知覚過敏や審美的な問題、歯の健康維持を目的として行われる治療です。特に、歯の根が露出することで起こる痛みや虫歯のリスクを軽減するために適応されます。手術が成功するためには、口腔内の衛生管理や、患者自身が治療後も適切なケアを続けられることが重要です。