歯周病治療

  • 2024.10.20

歯茎下がりの治療。知覚過敏の治療。歯根にできる虫歯の予防。

  • Before

    歯茎下がりの治療。知覚過敏の治療。歯根にできる虫歯の予防。

    治療前

  • After

    歯茎下がりの治療。知覚過敏の治療。歯根にできる虫歯の予防。

    治療後 

患者 30代男性
主訴・ニーズ 主訴:冷たいものがしみる(知覚過敏)ので見てほしい 虫歯を治したい
診断名・症状 上顎右側犬歯、第1・2小臼歯、第1大臼歯 歯肉退縮、知覚過敏 下顎臼歯部う蝕
治療内容・治療費(自費診療) う蝕治療 根面被覆
治療費総額 根面被覆110,000円
治療期間 半年
来院頻度 月一回程度 なお手術前後は週1回程度
リスク・副作用 根面被覆術(こんめんひふくじゅつ)は、歯の根が歯ぐきから露出してしまった際に、歯ぐきを再生させて根面を覆うための外科的治療法です。主に歯肉退縮による歯の根の露出を治療するために行われ、歯の見た目や歯の健康を改善するための有効な方法です。しかし、外科的処置であるため、いくつかのリスクや副作用が伴います。以下に詳しく説明します。 1. 痛みや不快感 手術後に痛みや不快感が生じることは一般的です。特に、歯肉組織を移植した場合、移植部位とドナー部位(口腔内の別の部分から採取した場合)の両方で痛みが出ることがあります。痛みは一時的であり、鎮痛薬で対処できますが、数日から1週間程度続くことがあります。 2. 腫れや炎症 術後、歯ぐきや周囲の組織が腫れることがあります。これは体の自然な反応であり、炎症が軽度であれば通常、数日以内に改善します。ただし、腫れが長引く場合や悪化する場合は、感染の兆候である可能性があるため、速やかに歯科医の診察を受ける必要があります。 3. 感染 手術後の感染リスクは常に存在します。適切な衛生管理や抗生物質の処方が行われることが一般的ですが、感染症が発生すると、痛み、腫れ、発熱などの症状が現れることがあります。感染は、処置部位や周辺組織の治癒を遅らせることがあるため、早期の対処が必要です。 4. 手術部位の失敗(治療結果が不完全) 根面被覆術では、歯肉が完全に根面を覆うことが目的ですが、必ずしも成功するとは限りません。治療の結果として、以下のような不完全な結果が出る可能性があります。 歯肉の再退縮: 手術後、歯肉が再び退縮し、根面が再び露出することがあります。特に、患者が術後の口腔ケアを徹底しなかった場合や、歯肉に過剰な負担がかかった場合に起こりやすいです。 不十分な被覆: 移植された歯肉が予想以上に少なく、根面が完全に覆われないことがあります。この場合、追加の治療が必要になることもあります。 5. 知覚過敏 手術後に知覚過敏が生じることがあります。特に、根面が長期間露出していた場合、根の部分が敏感になっていることが多く、手術による刺激や治癒過程で過敏感が一時的に悪化することがあります。この症状は通常、時間とともに改善しますが、場合によっては知覚過敏の治療が必要となることがあります。 6. 歯肉の色や質感の違い 移植された歯肉は、元々の歯肉とは色や質感が異なることがあります。特に、別の部分から採取された歯肉を移植した場合、歯ぐきの色が少し違って見えることがあります。これは審美的な観点から問題になることがあり、患者によっては見た目に満足できない場合もあります。 7. 術後の歯肉の薄さや弱さ 移植した歯肉が十分に厚みを持たない場合、術後に歯肉が薄く、もろい状態になることがあります。この場合、歯肉が将来的に再び退縮するリスクが高くなります。歯肉が薄いと、外部からの刺激(歯ブラシや硬い食べ物など)に対しても弱くなり、ケアが難しくなることがあります。 8. アレルギー反応や薬物反応 手術中に使用される麻酔薬や術後の処方薬(抗生物質や鎮痛剤)に対してアレルギー反応を起こすリスクがあります。アレルギー反応は軽度のものから、重篤なものまで様々ですが、手術前に必ず歯科医にアレルギー歴や薬剤に対する反応を伝えることが重要です。 9. 傷跡や瘢痕組織の形成 手術後に歯肉に瘢痕(はんこん)組織が形成されることがあります。瘢痕組織は通常の歯肉とは異なり、弾力性や感触が変わることがあります。また、瘢痕組織が目立つことで、見た目に影響を与えることがあります。 10. 歯の長さの変化 歯肉が再び退縮すると、歯の根が再び露出し、歯が長く見えるようになることがあります。これは特に前歯で目立ちやすく、審美的な問題になることがあります。 まとめ 根面被覆術は歯肉退縮を改善し、歯の健康や審美性を向上させる効果的な治療法ですが、痛み、腫れ、感染、知覚過敏、治療失敗のリスクなど、さまざまな副作用やリスクが伴います。患者さんは、手術前にこれらのリスクについて歯科医から十分な説明を受け、術後のケアを徹底することが大切です。

皆様こんにちは。まこと歯科・矯正歯科の院長をしております木村誠です。

今回は、歯茎下がりや知覚過敏の改善を行う根面被覆術を行った症例をご紹介致します。

初診時の正面からの口腔内写真です。下顎の奥歯の根本が黒くなっていることが分かります。

右側を拡大するとやはり下の奥歯の根本(歯根)が虫歯になっていることが分かります。これは、歯茎が下がったことで歯根部が露出してしまったことが虫歯になってしまった間接的な原因です。

上記の写真は、同じ患者様の左下の奥歯ですが、やはり歯肉退縮部分に虫歯を認めます。

このようになるのは、歯根部は、歯冠部と違いエナメル質がないため虫歯に対する抵抗力が低く、また一度虫歯になると重症化しやすいため非常に注意が必要です。

歯根部にできる虫歯のことを根面う蝕と呼びますが、高齢者の虫歯の多くは、この根面う蝕であり、治療に苦慮することが多々あります。

また歯肉退縮があると知覚過敏(冷たいものがしみる)などの症状を引き起こすことも多く、早期に治療をすることが根面う蝕や知覚過敏の予防になります。

上記の写真は、右上臼歯部になります。こちらも広範囲にわたり、歯肉退縮を認めました。こちらの部分に関しては、大きな問題が出る前に根面被覆術という歯周病の手術を行うことで治療することとなりました。

まず主要のスケーラー(歯石を除去する器具)で歯根の表面を綺麗にします。

さらに歯根の表面を綺麗にしていきます。

その後切開をし、結合組織という歯茎の一部を移植するための受容床を形成します。

口蓋から結合組織を採取し、リグロスという歯周組織再生療法を行う際にも使用する薬剤を塗布することで、血管新生を促します。

小さく開けた穴から結合組織を挿入します。

 

非常に細い糸を用いて縫合を行いました。

Before

After

このように当院では、歯肉退縮の治療として根面被覆をしております。もし歯茎下がりや知覚過敏で悩んでいる方は、当院までお気軽にご相談下さい。

最後に歯肉退縮について詳しく説明します。

歯肉退縮(しにくたいしゅく)は、歯ぐきが歯の根元から後退し、歯の根が露出する状態のことです。この状態は見た目に影響を与えるだけでなく、口腔内の健康に多くのリスクを引き起こします。以下に、歯肉退縮による具体的なリスクを詳しく説明します。

1. 知覚過敏

歯肉が退縮すると、通常は歯ぐきによって覆われている歯の根が露出します。歯の根は、エナメル質に覆われた歯の上部(歯冠)とは異なり、象牙質というより柔らかく敏感な組織で構成されています。象牙質には小さな管(象牙細管)が通っており、これが外部刺激(冷たいもの、熱いもの、酸性のものなど)に対して敏感に反応します。歯肉退縮によってこの象牙質が露出することで、次のような症状が現れます。

  • 冷たい飲み物や食べ物を摂取した際の鋭い痛み
  • 歯ブラシや空気が当たったときの不快な過敏反応

2. 虫歯(根面う蝕)

歯肉が退縮すると、露出した歯の根は虫歯になりやすくなります。通常、歯の根の表面はエナメル質ではなく、象牙質で構成されており、エナメル質よりも弱く、酸や細菌の攻撃に対して脆弱です。露出した根面が虫歯(根面う蝕)になると、次のような問題が発生します。

  • 虫歯が歯の深部に早く進行しやすくなる。
  • 治療が難しく、場合によっては根管治療が必要になることがある。

特に高齢者では、歯肉退縮によって根面が露出することで、根面う蝕のリスクが高まる傾向があります。

3. 歯の動揺・歯の喪失

歯肉退縮が進行すると、歯を支える骨(歯槽骨)や周囲の組織がダメージを受けることがあります。特に、歯周病が進行している場合には、歯槽骨が徐々に失われ、歯がぐらぐら動くようになります。最悪の場合、歯を支える骨がほとんどなくなり、歯を失うリスクが高まります。

4. 歯周病の進行

歯肉退縮は歯周病と深く関係しています。歯周病は、歯と歯ぐきの間に細菌が繁殖し、歯ぐきや歯槽骨を破壊していく病気です。歯肉退縮が進行すると、次のようなリスクが増加します。

  • 歯周ポケットの形成: 歯と歯ぐきの間に深い溝ができ、ここに細菌が溜まりやすくなります。
  • 炎症の悪化: 歯周組織が感染しやすくなり、歯周病が悪化します。
  • 歯槽骨の減少: 歯を支える骨が失われ、歯の安定性が低下します。

歯肉退縮が原因で歯周病が進行すると、長期的に見て全身の健康にも影響を与えることがあります。歯周病は心臓疾患や糖尿病、呼吸器疾患などとの関連が指摘されています。

5. 審美的問題

歯肉退縮は、見た目にも影響を与えます。特に前歯で歯肉が退縮すると、歯が通常よりも長く見えたり、不均衡な笑顔に見えることがあります。また、退縮した歯肉は不自然な形状になりやすく、歯ぐきの色や質感に差が生じることがあります。このような審美的な問題は、患者の自己イメージや自信に悪影響を及ぼす可能性があります。

6. 食べ物が詰まりやすくなる

歯肉退縮が進行すると、歯と歯の間に隙間ができることが多く、そこに食べ物が詰まりやすくなります。これにより、口臭の原因になったり、虫歯や歯周病のリスクが増加します。特に奥歯でこのような状況が起こると、詰まった食べ物を取り除くのが難しく、さらに口腔衛生の悪化を招くことがあります。

 

まとめ

歯肉退縮は単なる見た目の問題ではなく、歯や口腔内の健康に重大な影響を与える可能性があります。知覚過敏や虫歯、歯周病の悪化、さらには歯の喪失や噛み合わせの問題など、多くのリスクが関連しています。早期発見と適切な治療、そして日常的な口腔ケアが、歯肉退縮によるこれらのリスクを防ぐために非常に重要です。