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  • 2024.12.26

治療期間の短縮や手術回数の減少が可能となる、抜歯即時インプラント治療。(奥歯編)

治療期間の短縮や手術回数の減少が可能となる、抜歯即時インプラント治療。(奥歯編)

小臼歯と大臼歯の抜歯即時インプラント治療:概要と重要ポイント

抜歯即時インプラント治療とは、歯を抜いたその日にインプラントを埋入する治療法です。治療期間を短縮し、骨吸収を防ぐ効果が期待できるため、小臼歯や大臼歯の治療にも適しています。ただし、部位による特徴や注意点が異なるため、詳細に理解することが重要です。本記事では、小臼歯と大臼歯それぞれに特化した抜歯即時インプラント治療について解説します。


1. 小臼歯の抜歯即時インプラント治療

① 特徴

小臼歯は前歯と大臼歯の中間に位置し、審美性と機能性の両方が求められる部位です。抜歯即時インプラント治療では、早期に自然な見た目と噛み合わせを回復することが目指されます。

治療前 難治性の根尖性歯周炎に罹患している上顎右側第2小臼歯

抜歯

同日にインプラントを埋入。この症例では、切開をする必要がなかったため、術後痛みや腫れを最小限にすることができました。

最終上部構造セット時(抜歯即時インプラント治療を行なって約3ヶ月で終了しました。)

② メリット

  • 治療期間の短縮
    抜歯と同時にインプラントを埋入するため、全体の治療期間が短縮されます。
  • 骨吸収の抑制
    抜歯後すぐにインプラントを埋入することで、骨吸収が抑えられます(出典:Schropp et al., 2003)。
  • 審美性の向上
    インプラントと仮歯の早期装着により、自然な見た目を素早く取り戻すことが可能です。

③ 適応条件

  • 骨の量と質が十分にあること。
  • 抜歯部位に感染や炎症がないこと。
  • 噛み合わせの負担が過剰でないこと。

④ 注意点

  • 小臼歯は根が比較的細いため、インプラントの埋入位置に高い精度が求められます。

当院では、抜歯即時インプラントはもちろん、通常の症例においてもサージカルガイドを用いて手術をする為正確な位置にインプラントを埋入することができます。

  • 骨量が不足している場合、骨再生治療(GBR)を併用する必要があります。

上顎の小臼歯の場合、上顎洞との距離が短い症例では、インプラントと同時に上顎洞底挙上術を行うこともあります。それにより上顎洞にインプラントが突き抜けることを防ぐだけでなく、初期固定も得られやすくなります。しかし非常に高度なテクニックを必要とします。


2. 大臼歯の抜歯即時インプラント治療

下顎左側第1大臼歯が重度のう蝕により、抜歯の適応でした。

抜歯と同時にインプラントを埋入しました。

初期固定が得られたためヒーリングアバットメントまで装着。それにより抜歯を含め1回の手術で終えることができました。

最終上部構造セット時

① 特徴

大臼歯は食べ物をすり潰す役割を担うため、噛む力が強く加わる部位です。骨量が多い一方で、上顎や下顎で骨の状態や形態が異なるため、特別な考慮が必要です。

② メリット

  • 骨量が豊富なケースが多い
    骨が十分にある場合、インプラントの初期固定が得られやすい。
  • 即時的な機能回復
    仮歯を装着し、噛み合わせを早期に回復できる場合もあります。
  • 骨吸収の防止
    抜歯後すぐに埋入することで、骨の変化を最小限に抑えることができます。

③ 適応条件

  • 骨が十分にあること(特に下顎)。
  • 上顎の大臼歯部では上顎洞(サイナス)が干渉しないこと。
  • 噛み合わせの力が分散される設計が可能であること。

④ 注意点

骨量不足のケース上顎の大臼歯では、骨が薄い場合や上顎洞に近い場合があります。この場合、骨再生治療(GBR)や上顎洞底挙上術(サイナスリフト)が必要です。

噛み合わせの負担
大臼歯は噛む力が集中するため、適切な位置と角度での埋入が重要です。


3. 小臼歯と大臼歯の違い

項目 小臼歯 大臼歯
審美性 高い(特に前方の小臼歯) 低い(主に機能性を重視)
骨量 少ない場合がある 上顎洞干渉に注意が必要
噛み合わせの負担 軽い 強い
手術の複雑さ 比較的簡単(骨量が十分なら) 骨量不足の場合に高度な技術が必要

4. 抜歯即時インプラント治療の一般的な流れ

  1. 事前診断
    • CTスキャンを用いて骨の状態や形状を確認。
    • 噛み合わせや周囲組織の健康状態を評価。
  2. 抜歯
    • 周囲の骨をできるだけ保存しながら、慎重に歯を抜歯。
  3. インプラント埋入
    • 抜歯後、適切な位置と角度でインプラントを埋入。
    • 必要に応じて骨補填材を使用。
  4. 仮歯の装着
    • 審美性や機能性を早期に回復するために仮歯を装着。
  5. 治癒期間
    • インプラントが骨に結合するまで2~6か月程度待機。
  6. 最終補綴
    • 治癒が完了したら最終的な人工歯(セラミッククラウンなど)を装着。

5. 抜歯即時インプラント治療のエビデンス

① 成功率

  • 抜歯即時インプラント治療の成功率は、従来の方法とほぼ同等で**90~95%**と報告されています(出典:Chen et al., 2004)。

② 骨吸収の防止

  • 抜歯即時インプラントは骨吸収を抑制する効果があり、特に審美領域や機能性が求められる部位で有効です(出典:Schropp et al., 2003)。

③ 大臼歯部の特殊性

  • 上顎の大臼歯部では、骨再生治療を併用することで成功率を向上させることが可能です(出典:Esposito et al., 2006)。

6. まとめ

小臼歯と大臼歯の抜歯即時インプラント治療は、患者様の骨や歯茎の状態、噛み合わせの力などに応じて計画されます。治療期間を短縮し、骨吸収を防ぐことで、審美性と機能性の両立が可能です。

治療を検討されている方は、当院までお気軽にご相談いただけますと幸いです。個々の状況に合わせたインプラント治療をご提案致します。

参考文献

  • Chen, S. T., & Buser, D. (2004). Esthetic outcomes following immediate and early implant placement in the anterior maxilla—A systematic review. The International Journal of Oral & Maxillofacial Implants.
  • Schropp, L., et al. (2003). Bone healing and soft tissue contour changes following single-tooth extraction: a clinical and radiographic 12-month prospective study.
  • Esposito, M., et al. (2006). Short‐term success of immediate, early, and conventional loading of dental implants: A Cochrane systematic review.