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  • 2024.12.23

「矯正治療で歯茎下がりが気になる方へ:治療前・後のケア完全ガイド」

「矯正治療で歯茎下がりが気になる方へ:治療前・後のケア完全ガイド」

矯正治療で歯茎下がりが気になる方へ:矯正治療前に知っておくべき原因と対策

皆様こんにちは。まこと歯科・矯正歯科の院長を務めております木村誠です。

矯正治療は、歯並びを整えることで審美性と機能性を高める治療ですが、その過程や前後に「歯茎下がり」が気になる方も少なくありません。歯茎下がりは、見た目に影響するだけでなく、歯の健康にも深刻な影響を与える可能性があります。本記事では、矯正治療前に知っておくべき歯茎下がりの原因と対策を詳しく解説します。


1. 歯茎下がり(歯肉退縮)とは?

歯茎下がり(歯肉退縮)とは、歯を支えている歯肉が後退し、歯の根元が露出してしまう状態です。歯茎が下がることで以下の問題が生じます。

  • 見た目の変化:歯が長く見えてしまう。
  • 知覚過敏:歯の根が露出することで冷たいものや熱いものがしみる。
  • 虫歯リスクの増加:歯の根元はエナメル質が少ないため、虫歯になりやすい。
  • 歯の動揺:重度の場合、歯がぐらつくことがある。

2. 矯正治療でなぜ歯茎が下がることがあるのか?

矯正治療自体が直接的に歯茎下がりを引き起こすわけではありませんが、いくつかの要因が関係しています。

① 歯の動きによる影響

矯正治療では、歯に力をかけて徐々に移動させます。この過程で歯槽骨(歯を支える骨)が吸収されることがあり、その結果、歯茎も後退することがあります。特に歯槽骨が薄い部分歯並びが極端に乱れている部分ではリスクが高まります。好発部位としては、上の犬歯や下の前歯です。八重歯(低位唇側転位)の状態では、顎の骨から歯根が露出しやすいため歯肉退縮も起こりやすいとされています。

抜歯矯正と非抜歯矯正における歯列の動きと歯肉退縮の関係について

矯正治療において、抜歯矯正非抜歯矯正では歯列の動き方に違いがあり、歯肉退縮(歯茎下がり)への影響も異なる場合があります。

参考症例① 抜歯を伴う矯正治療

治療前

治療後

抜歯矯正では、上記の参考症例の前歯部のように内側に入るため、歯肉退縮が改善する可能性がある。

参考症例 抜歯を伴なわない矯正治療

治療前

治療後

非抜歯矯正では、歯列は拡大するため矯正治療後に歯肉退縮が進行しないか経過を見る必要があります。

一般的に、抜歯矯正では歯列が顎骨の内側方向に動く傾向があるため、矯正治療の過程で歯肉退縮が改善される可能性があります。一方、非抜歯矯正では歯列が**顎骨の外側(頬側)**に拡大されることが多く、歯肉退縮が進行する可能性が指摘されています(出典:Camargo et al., 2001)。

したがって、矯正治療前に歯肉退縮が見られる場合でも、歯を動かす方向や治療方針に応じて根面被覆のタイミングを慎重に判断する必要があります。根面被覆を矯正治療前に行うべきか後に行うべきかは、個々の患者の歯列や骨の状態、そして矯正計画による影響を考慮して決定されます。

注意事項

抜歯矯正と非抜歯矯正にはそれぞれの適応と利点があります。本記事で述べたような歯列の動き方や歯肉退縮への影響は一般的な傾向であり、必ずしも抜歯矯正が非抜歯矯正より優れているというわけではありません。最適な治療法は、患者ごとの症例に基づいて専門医と相談して決定することが重要です。

粘膜が薄い方は、非常に歯肉退縮を起こしやすいため注意が必要です。


3. 矯正治療前にできる歯茎下がり対策

矯正治療前にできる対策をしっかり行うことで、歯茎下がりのリスクを最小限に抑えましょう。

① 歯周病検査と治療を受ける

矯正治療の前に必ず歯周病の有無を確認しましょう。歯周病が進行している場合、矯正治療が歯茎下がりを加速させる可能性があります。歯科医院で歯周ポケットの深さ歯槽骨の状態を検査してもらい、必要な治療を受けましょう。

② 正しい歯磨き方法を習得する

矯正装置が付くと歯磨きが難しくなるため、正しいブラッシング方法を矯正治療前に習得することが大切です。歯科医や歯科衛生士から指導を受け、柔らかめの歯ブラシや電動歯ブラシを使用するのも効果的です。

  • ポイント:力を入れすぎず、小刻みにブラッシングする。

③根面被覆術(外科処置)を受ける

根面被覆を治療前に行うべきケース治療後に行うべきケースについて詳しく説明し、判断の基準を分かりやすく解説します。


1. 根面被覆を矯正治療前にした方が良い場合

① 歯茎下がりが重度であり、進行リスクが高い場合

矯正治療を始める前に既に歯茎下がりが進んでいる場合、さらに歯を動かすことで歯茎がさらに後退するリスクがあります。特に薄い歯茎歯槽骨が少ない部分は、矯正治療の力によって影響を受けやすいです。

治療前

治療後

  • ポイント:矯正治療による歯茎の悪化を防ぐために、先に根面被覆を行い、歯茎の厚みや安定性を確保します。

② 知覚過敏が強く、日常生活に支障がある場合

治療前 歯肉退縮は軽度ですが、くさび状欠損もあり、知覚過敏がある状態でした。

歯根が露出していると、冷たいものや熱いものがしみる知覚過敏が強くなることがあります。この場合、矯正治療の装置が加わることでさらに刺激が増し、不快感が増大する恐れがあります。

切開し、歯根の状態を見るとくさび状欠損が歯茎の下にできていることがわかります。

上顎の口蓋より結合組織を採取し、移植しました。

手術終了後

治療後 知覚過敏症状は消失し、歯肉退縮も改善しました。歯肉の厚みが増したことで、今後の歯肉退縮の予防にもなります。

  • ポイント:先に根面被覆を行い、知覚過敏の症状を改善してから矯正治療を開始することで、治療中の快適さを保てます。

2. 根面被覆を矯正治療後にした方が良い場合

① 歯列が著しく不正である場合

歯並びが著しく乱れている場合、根面被覆を先に行うと術後の治療結果が安定しにくくなることがあります。なぜなら、歯が移動することで歯茎や歯槽骨にも変化が生じるためです。

  • ポイント:矯正治療後に歯の位置が整ってから根面被覆を行うことで、術後の歯茎の状態が安定しやすくなります。
  • ポイント:八重歯(低位唇側転位)のように歯根が顎骨の外側にある場合、歯肉移植した際、血流の供給が乏しく難易度が高くなる。

矯正治療を行い、なるべくボーンハウジング(顎の骨の中)に歯を内側に動かし、歯列を整ってから歯茎下がり(歯肉退縮)を再評価します。

遊離歯肉移植術を行いました。

角化歯肉(丈夫な歯肉)が増加し、歯肉が厚くなりました。歯肉退縮も回復傾向にあります。

歯列が整い、また歯肉を移植したことで、歯肉の厚みが増したことで、歯肉退縮が進行しにくくなりました。

② 矯正治療による歯茎下がりが新たに発生した場合

上記の症例は、矯正治療後に歯肉退縮を生じた症例です。歯列を広げる移動(顎の骨の外側への歯の移動)を行うと歯肉退縮を生じてしまうことがあります。

☆注意

歯列を拡大すること自体は、気道に問題を生じにくく、また抜歯矯正や外科矯正を回避することができることから避けれないことも多々あります。

矯正治療の過程で、特に前歯歯槽骨が薄い部分に歯茎下がりが発生することがあります。こうしたケースでは、矯正治療後に状態を見極めてから根面被覆を行うのが合理的です。

  • ポイント:歯並びが整った後に歯茎の状態を確認し、必要な部分にのみ根面被覆を行うことで治療の精度を高めます。

3. 矯正治療前と後、どちらを選ぶべきかの判断基準

最終的に、根面被覆を矯正前に行うか後に行うかは、以下の基準で判断します。

判断基準 矯正治療前に行う 矯正治療後に行う
歯茎下がりの重症度 重度・進行が予想される場合 軽度・新たに発生した場合
歯列の状態 歯並びが比較的整っている場合 歯列が著しく乱れている場合
知覚過敏の有無 強い知覚過敏がある場合 矯正中に症状が軽い場合
外科的手術の難易度 歯茎状態が安定している場合 術後に状態を整えたい場合
歯科医師の判断 事前の安定が必要な場合 矯正後の調整が最適と判断される場合

4. まとめ:根面被覆は個々の状態に合わせた判断が重要

根面被覆を矯正治療前に行うか後に行うかは、歯茎の状態や歯列の乱れ具合によって判断が分かれます。

  • 矯正前:重度の歯茎下がりや知覚過敏がある場合。
  • 矯正後:歯列の乱れが著しい場合や矯正後に状態を確認してから治療した方が良い場合。

最終的な判断は、矯正歯科医歯周病専門医が連携し、患者一人ひとりの状態に合わせて行われます。治療前には歯茎の健康状態をしっかり確認し、治療の計画を立てることが重要です。

当院では、矯正治療と根面被覆を一つの歯科医院で受けることができます。歯茎下がりが気になる方は、当院までお気軽にお問い合わせください。

まこと歯科・矯正歯科

福岡県福岡市東区香椎駅前2−12−54

電話番号092➖692➖2963


参考文献

  • 日本臨床歯周病学会公式サイト: https://www.jacp.net/
  • American Association of Orthodontists: “Gingival Recession and Orthodontics”
  • 山田和彦著『歯周病予防と治療』医歯薬出版株式会社
  • 日本臨床歯周病学会「根面被覆術について」
  • American Academy of Periodontology: “Soft Tissue Grafting and Root Coverage”
  • 小林隆太郎著『歯周組織再生療法の基礎と臨床』医歯薬出版株式会社

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