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  • 2024.12.15

インプラント治療が適さない場合とは?

インプラント治療が適さない場合とは?

皆様こんにちは。まこと歯科・矯正歯科の院長をしております木村誠です。

今回のテーマは、「インプラント治療が適さない場合とは?」です。

以前のブログで、歯が欠損した場合には、まずインプラント治療を検討した方が良いことをお伝えしました。

今回は、その例外となるケースについてご説明させて頂きます。

歯を失った際にインプラントが適さない状況について

歯を失った場合、インプラントは優れた治療法の一つとして広く利用されています。しかし、インプラントはすべてのケースに適用できるわけではなく、以下のような条件下では適さない場合があります。本稿では、インプラントが適さない主な状況について詳しく説明します。


1. 下の前歯など、インプラントを行うにはスペースが足りない場合

インプラント治療を行うためには、十分な骨量と周囲のスペースが必要です。特に、下顎前歯の部位では、以下のような理由でインプラントが難しいことがあります:

骨幅および骨量の不足

元々全体的に骨が薄い方や少ない方、また歯周病などにより大きく骨欠損がある方は、インプラントを行う場合、大きな手術を必要とすることが多くそれを避けるために他の選択肢を選ぶことがあります。特に下顎の前歯部は他の部位に比べて骨の厚みが薄いことが一般的です。

隣接歯との距離が不足

インプラントの周囲には、隣接する歯や歯根との間に適切な距離を保つ必要があります。スペースが狭い場合、隣接歯への影響や審美的な問題が生じる可能性があります。

神経や血管への影響

下顎の臼歯には下顎神経や血管が走行しています。これらに近接しすぎると、神経損傷や出血のリスクが高まります。特にスペースが不足している場合、インプラントの位置調整が難しくなり、安全性が損なわれる可能性があります。

代替治療法

スペース不足が原因でインプラントが適さない場合、部分入れ歯や歯列矯正によってスペースを広げる方法、またはブリッジを使用することが選択肢となります。これらの方法により、咬合機能を維持しながら患者の負担を軽減することが可能です。


2.生涯のインプラントの本数を減らすために戦略的にブリッジを選択することがあります。

欠損歯の両隣が失活歯(神経のない歯)の場合には、インプラントを即座に行うことが適さないことがあります。

これにはいくつかの理由があります。

隣接歯の脆弱性

失活歯は天然歯に比べて脆く、物理的な負担に弱い傾向があります。インプラントを支えるための力が失活歯に過度にかかると、歯が割れるなどのトラブルが生じる可能性があります。そのため、隣接歯が安定するまではブリッジを用いて咬合力を分散することが選択されます。

暫定的なブリッジの利点

治療前のパノラマレントゲン写真

左上の奥歯(レントゲンは左右が逆に映るため、向かって右上)は、4本欠損している状態です。神経がない歯にトラブルを生じており、虫歯や歯根破折により6本の抜歯が必要になりました。また年齢を考慮し、インプラントの本数を減らす、将来的な大きな外科処置を減らすために、便宜的に2本の抜歯をすることとしました。

治療後のパノラマレントゲン写真

元々なかった左上の奥歯にはインプラントのブリッジを行いました。

黄色で囲った部分は、欠損歯の両隣の歯は、神経のない歯であり、将来的に抜歯になる可能性も高く、この時点では、インプラント治療は行わず、ブリッジにて対応しました。

右上は、噛み合わせと将来的な安定を考慮し、戦略的に抜歯し、インプラントのブリッジを行いました。

※インプラントを将来的に行うことを予定している場合でも、ブリッジで対応することで以下のメリットが得られます:

  • 咬合機能の維持:欠損部位を補うことで、咀嚼機能の低下を防ぎます。
  • 歯列の安定化:隣接歯の移動や歯列の乱れを防ぎます。
  • 骨の維持:欠損部位に適度な圧力をかけることで骨吸収を抑える効果が期待できます。

タイミングの重要性

インプラントを行うタイミングは、隣接歯の状態や口腔全体の状況によって異なります。特に、隣接歯がさらに損傷した場合や抜歯が必要となった場合には、インプラントへの切り替えが検討されます。


3. 歯列・咬合・年齢を考慮した第2大臼歯の欠損

第2大臼歯が欠損した場合、噛み合わせや清掃性の向上を考慮し、インプラントが適さないケースもあります。

正常な歯の本数は、親知らずを除くと、上下それぞれ14歯の合計28歯です。上記の治療後の歯の本数を数えると上下とも12歯で合計24歯になっています。歯の本数は、正常よりも少ないですが、治療前よりも快適なお口の状態になりました。

このように一番奥にある第2大臼歯が抜歯になった場合、インプラントを含め補綴治療をするかどうかは、年齢や噛み合わせなどを含めて総合的に判断する必要があります。

骨量の問題

第2大臼歯が欠損すると、特に上顎では上顎洞が近接しているため、インプラントを埋入する骨量が不足していることが多いです。この場合、骨造成やサイナスリフトが必要になりますが、患者の年齢や全身状態によっては、これらの外科的処置が適さない場合もあります。

咬合のバランス

噛み合わせの状態が崩れている場合、第2大臼歯の欠損をインプラントで補うことでかえって他の歯に負担をかける可能性があります。特に、高齢者や咬耗(歯の摩耗)が進行している患者では、義歯やブリッジなどの代替治療が推奨される場合があります。

年齢と適応性

若年者の場合、骨の成長がまだ完全に終了していないため、インプラント治療が適さないことがあります。一方、高齢者では骨の再生能力が低下しているため、インプラントが成功しにくい場合があります。


4. 全身疾患があり外科手術が難しい場合

インプラント治療は外科的手術を伴うため、全身の健康状態が治療の成否に大きな影響を与えます。以下のような全身疾患を持つ患者には、インプラントが適さないことがあります:

心血管疾患

狭心症や心筋梗塞の既往歴がある患者では、手術によるストレスが心臓に負担をかける可能性があります。そのため、安全を最優先に考える必要があります。

糖尿病

糖尿病が十分にコントロールされていない場合、術後の傷の治癒が遅れたり、感染リスクが高まるため、インプラントの成功率が低下します。

骨粗しょう症

骨の密度が低下している患者では、インプラントと骨の結合が不十分になるリスクがあります。また、ビスホスホネート系薬剤を服用している患者では、顎骨壊死の可能性も考慮されます。

免疫疾患

免疫抑制剤を使用している患者や自己免疫疾患がある場合は、感染や排除反応のリスクが高まります。

代替治療法

義歯やブリッジなどの治療法は、全身疾患を持つ患者においても安全性が高く、機能回復の選択肢として有効です。


結論

インプラント治療は非常に有用な治療法ですが、全ての患者に適しているわけではありません。スペース不足や隣接歯の状態、全身疾患など、患者一人ひとりの口腔内や全身の状況に基づいて最適な治療法を選択することが重要です。インプラント治療が適さない場合でも、ブリッジや義歯などの代替治療法で十分な機能回復が可能です。

最終的には、個々の口腔内の状況によってインプラントが適するか適さないかは変わります。詳しく知りたい方は、まこと・歯科矯正歯科までお気軽にご相談ください。