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  • 2024.10.13

重度に進行した虫歯を救う歯冠長延長術

重度に進行した虫歯を救う歯冠長延長術

皆様こんにちは。まこと歯科・矯正歯科の院長をしております木村誠です。

今回は、重度の虫歯により抜歯の適応と診断される歯を歯冠長延長術という歯周病の手術を行うことで保存できた症例をご紹介致します。

上記の写真は、虫歯により大きな穴が空いている状態を示しています。

レントゲン写真の矢印の先端の部分に透過像(黒くなっている像)を認め、重度の虫歯であることがわかりました。

銀歯を外し、う蝕検知液で虫歯の部分を染色し、丁寧に虫歯の部分を除去していきました。

歯髄まで虫歯は進行しており、さらに周辺の部分は歯ぐきの中まで進行しておりました。

この状況では、適切に補綴(被せ物)することはほぼ不可能であり、この状況のままで無理矢理保存したとしても根尖性歯周炎などを発症し、先々抜歯になる可能性が高くなります。

しかし、今回幸いだったことに歯ぐきの中には、正常な歯質が存在するということです。

歯冠長延長術という歯周病の手術を行うことで、保存が可能と判断しました。

まず根管治療を適切に行うためにコンポジットレジンで隔壁をたてました。

ラバーダム防湿下で根管充填を行い手術に備えます。

手術前の状況です。歯ぐきの上には、コンポジットレジンで作られた土台が2mm程度見えるだけです。

歯冠長延長術を行うことで、正常な資質を歯ぐきの上に出しました。

手術後の状況です。歯ぐきの上に正常な歯質が出てきました。これにより適切に補綴(被せ物)ができる環境を整えることができました。

ジルコニアセラミックを用いて最終補綴を行いました。

頬側

術前と術後の状況を示します。

術前

術後

歯の保存は、非常に重要です。しかし単に保存すれば良いというわけではありません。今回の症例も歯冠長延長術を行わなければ、長期的に保存することは難しく、適切に処置をしなければトラブルが出てきます。

重度の虫歯の全てが今回のように保存できるわけではありません。しかし当院では、保存可能と判断した歯に関しては、あらゆる知識、技術、経験を駆使して治療を行います。

最後にクラウンレングスニングについて説明します。

歯周外科におけるクラウンレングスニング(Crown Lengthening、歯冠長延長術)は、主に以下のような目的で行われる外科的処置です。

1. クラウンレングスニングとは

クラウンレングスニングは、歯の歯肉(歯茎)や骨を一部取り除き、歯の歯冠(露出している部分)を長く見えるようにする外科的手術です。この処置は、主に次の2つの目的で行われます。

  • 機能的クラウンレングスニング:歯の修復が困難な場合に、適切な修復処置を可能にするために、歯の歯肉や骨を削り、歯の露出部分を増やすことで行います。
  • 審美的クラウンレングスニング:歯肉が過剰に覆われている「ガミースマイル」などの改善や、歯の審美的な見た目を向上させるために行われます。

2. 適応症

クラウンレングスニングが必要になる状況は次の通りです。

  • 歯冠の損傷:虫歯や外傷によって歯冠(露出した歯の部分)が破壊され、歯肉の下に隠れてしまった場合、適切な修復を行うために歯の露出を増やす必要があります。
  • 歯の修復:クラウン(被せ物)やブリッジなどを装着する際、十分な健全な歯が露出していないと、適切に固定できないため、歯肉を除去して歯を露出させます。
  • 歯周病治療:歯周病が進行して歯周ポケットが深くなった場合、ポケットを浅くし、歯周組織の健康を改善するために行われることがあります。
  • 審美目的:ガミースマイルの矯正や、歯のラインを整えて審美的な笑顔を得るために行う場合もあります。

3. 手術のプロセス

クラウンレングスニング手術は通常、局所麻酔下で行われ、次のような手順で進行します。

  1. 歯肉切開:まず、歯肉を切開し、歯の骨の部分を露出させます。
  2. 骨の削除(必要に応じて):骨が修復やクラウンの装着を邪魔している場合は、骨を削除して歯の長さを延長します。
  3. 歯肉の再配置:歯肉を元の位置に戻し、縫合します。この際、歯冠がより多く露出するように歯肉が再配置されます。
  4. 治癒:手術後、数週間かけて歯肉が回復し、その後、最終的な修復処置(クラウンの装着など)が行われます。

4. 治癒とアフターケア

  • 治癒には通常、2〜3ヶ月かかることがあります。歯肉や骨の治癒を確認してから、クラウンやブリッジの最終装着が行われます。
  • 術後のケアとして、感染防止のための適切な口腔衛生が重要です。また、術後の腫れや痛みを抑えるために鎮痛薬や抗生物質が処方されることがあります。

5. メリットとリスク

メリット:

  • 歯の寿命を延ばすことができ、抜歯を避けられる可能性があります。
  • 審美的な問題を改善し、笑顔に自信を持てるようになります。
  • 健康な歯周組織を保ち、歯周病リスクを減らせます。

リスク:

  • 感染や出血などの術後合併症が発生する可能性があります。
  • 歯が敏感になることがあります。
  • 一部の患者では、期待通りの審美的結果が得られない場合もあります。

クラウンレングスニングは、歯の機能や見た目を改善するために有用な手術ですが、術後のケアや慎重な計画が必要です。